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22年前、イチローが松坂大輔から“狙って100号ホームランを打った理由”「あれくらいで確信なんて早すぎるんだよ」 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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posted2021/07/09 17:03

22年前、イチローが松坂大輔から“狙って100号ホームランを打った理由”「あれくらいで確信なんて早すぎるんだよ」<Number Web>

記念すべき100本目のホームランを、松坂大輔から放っているイチロー

 そして第3打席は松坂が5球続けてストレートで押した挙げ句、6球目に投げたスライダーでまたも空振りの三振を奪う。なんと3打席連続三振――。

「あれが曲がってこないほうのスライダーです。イチローのイメージの中ではもう少し身体の近くへ来るはずが、あれっ、来なかったという感じの空振りでした。大輔にしても意図して曲げなかったわけじゃなくて、全力でいってるんですけどね」

2度目の対決 松坂にイチローとどう勝負させた?

 アウトハイに“ジャイロ”で伸びるストレート、曲がってくるかどうかもわからないスライダー――この2つのボールを武器に、松坂は2度目の対決となった6月23日の西武ドームでイチローに挑む。しかしこの日はストレートを2度、打たれた。レフトへの犠牲フライとセンター前ヒット。凡退した2打席も、いずれもストレートを打ってレフトフライとセカンドゴロ。この日、松坂が投じたストレート9球、スライダー6球、チェンジアップ1球の、あわせて16球を、イチローはじっくりと見極めていた。

 ふたたび中嶋の言葉――。

「スライダーの軌道を覚えられたら、いつかは対応してくるだろうなという不安はありました。このとき、まだカーブはヘタだったんです。軽くしか投げられなかった。1球、チェンジアップを使ったのかな。あれもまだ使い物にはならなかったですね。僕は1年目の大輔にはフォークも要求しなかったし、ほぼほぼ、まっすぐとスライダーなんです。カーブも1球くらいは使ってもよかったかもしれません。でもイチローはカーブ、ナンボでも打ちますからね。となると、まっすぐとスライダーの2つしかないわけで、それをどのコースに、どの高さに投げるかしかないじゃないですか。2分の1の確率だったら苦しいですよね」

絶対打たれるなら、どこで打たれるか

 そして迎えた7月6日、3度目の対決。

 松坂はすでに6勝を挙げ、この日も8回までをゼロに抑えていた。西武が5点をリードした9回裏。松坂は完封目前、イチローは先頭バッターだった。中嶋が言う。

【次ページ】 松坂の名言にイチローは笑っていた

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