Overseas ReportBACK NUMBER
サニブラウンを支えた仲間の存在。
「ハキームは本物のゲイターだよ」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2019/06/14 11:45
100m走は個人競技だが、ひとりでは強くなれない。サニブラウンにも支え合う仲間たちがいたのだ。
サニブラウンを奮い立たせた仲間への思い。
「ライアンはすごい練習でがんばっていた。個人ではここまで来られなかったのですが、せめて4継だけでも勝たせてあげられたら」
クラークが個人種目での出場を逃し、落ち込んでいた姿、その後も懸命に練習していた姿を目にしていた。
「ライアンのためにも絶対に勝ちたい」
その思いがサニブラウンを奮い立たせた。
400mリレー決勝。フロリダ大学は5レーンに。
2走のサニブラウンは、自己ベスト10秒02を持つ1走のレイモンド・イキヴォからバトンを受けると猛然と突き進んだ。わずかにリードし、3走のグラント・ホロウェイに。ホロウェイは大きなストライドでグイグイと圧倒し、アンカーのライアン・クラークへ。
トップでバトンを受けたクラークは必死に、もがくようにフィニッシュラインを駆け抜けると、左手を上げ、顔をくしゃくしゃにした。4年生のクラークにとって、これが全米大学選手権、最後のレースだった。
走った4人、チームメイト、コーチやスタッフの思いが形となり、優勝だけではなく、アメリカ大学記録という大きなご褒美もついてきた。
チームメイトと喜びを分かち合うと、サニブラウンは足早にウォームアップ場に戻っていった。大きな笑顔を浮かべながら。
溶け込むのを待ってくれたチームメイトたち。
入学当初、怪我の影響でチームメイトと別メニューで練習を行うことも多かったサニブラウンは、チームに今ひとつ馴染めず、大会での応援などにも積極的に加わることはなかった。「(応援歌の歌詞も)何を言っているのか分からなかった」と言うように、留学生特有の悩みも抱えていた。
そんなサニブラウンをチームメイト達は温かく見守っていた。無理強いしなくてもいつか輪に入ってくるはず。それを待とう。