球体とリズムBACK NUMBER
ロナウドが代表通算7度目のハット。
ポルトガルが真の欧州王者に王手。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/06/07 07:00
初のセリエA挑戦となった今季リーグ戦で21ゴールを挙げたロナウド。もちろんポルトガル代表でもその決定力は圧倒的だ。
フェリックスは消極的だったが。
ロナウドの相棒に指名されたフェリックスは、代表デビューの重圧からか、動きが硬く消極的なプレーが目立つ。
前半の最終盤にはパートナーから「決めな」と言わんばかりの完璧な浮き球パスをゴール前で受けたものの、淡白に足を合わせ、ゴールの上にふかした。前半終了を告げる笛が鳴ると、背番号23をまとった新鋭はうつむきがちにドレッシングルームへ向かっていった。
後半も開始からCR7がキレのある動きを披露。自陣の左サイドでボールを得ると、縦に独走してクロスを上げたり、中央右寄りの位置から惜しいミドルを放ったりしてスイスのゴールを脅かした。試合はポルトガルが優勢と言える展開で進んでいたが、その数分後に奇妙な1分間が訪れる。
VARによるPKでスイスが同点に。
スイスのジェルダン・シャキリが鋭いフィードを前方へ送ると、ボックス内のボールの落下地点でスイスのシュテフェン・ツバーとポルトガルのネウソン・セメドが交錯する。
スイスの選手たちがファウルを主張するなか主審のフェリックス・ブリッヒは試合を続行させ、今度は反対のペナルティエリアでベルナルド・シウバが倒されてPKの宣告。スイスの猛抗議を受けたブリッヒ主審は両手で長方形を描いてVAR確認に入る。
するとPKはポルトガルではなく、先に倒されたスイスに与えられた。スタンドの大半を占めたポルトガル人たちから、耳をつんざくような指笛とブーイングが響く。そのなかリカルド・ロドリゲスがきっちりシュートを沈めて、試合は振り出しに戻った。
その後、ポルトガルの最終ラインの中央で見事な守備を見せ続けたペペが負傷交代したときは、ホームチームに嫌な予感さえ漂った。しかし、スイスのハリス・セフェロビッチのヘディングが枠を外れるなどして、なかなか均衡が破られない。試合は徐々に膠着していったが、終盤に千両役者が真価を発揮した。