錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
“キツイ時にナダル”で錦織完敗。
最高の気分で挑戦できる日は来るか。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/06/05 18:00
クレーの最強王者ナダルに完敗した錦織圭。8強止まりでローランギャロスを後にした。
「体力の限界がきている」
1-6、1-6、3-6。「体が動かなくて最初の2セットはコートにいるのも辛かった」というほどフラストレーションをためた試合は、1時間51分の完敗に終わった。
「最初からもうちょっとポジティブでいられたら、もうちょっとゲームは取れていたかもしれない」
伏し目がちの表情に落胆ぶりを表してそう振り返る。降雨により第3セットの2-4で1時間の中断があったが、流れを変えるには遅すぎたし、この日の錦織の状態ではほぼ不可能だった。
「毎回、強い選手とやるときに体力の限界がきている」
全豪オープンでノバク・ジョコビッチとの準々決勝を途中棄権したあとにも聞いた言葉を、また聞くことになった。
拍手をしなかったナダル。
試合後、敗れて退場する対戦相手に対してほぼいつも自分の片付けの手を止めて拍手で見送るナダルが、この日はそれをしなかった。錦織のパフォーマンスが本調子にほど遠い状態だったことを知った上での、これもまたナダルらしい礼儀だったと考える。
「ケイはいつだってすばらしい選手だよ。誰もが危険な相手である中で、今も世界7位ということは世界で7番目に危険な選手ということだ」
そう微笑んだナダルは、自身については「調子がどんどん上がってきて、今が一番いい状態だ」と高まる自信を見せた。このナダルに続いて37歳のロジャー・フェデラーも準決勝進出を決め、1日遅れで準々決勝を戦うジョコビッチもここまで競ったセットすらない絶好調ぶりだ。
この鉄人たちに最高の気分で挑戦できる日は来るだろうか。
錦織自身も、もう29歳になった。
しかし、決まり事にとらわれない自由なテニスがもう1度その魅力を最大限に発揮するときが来ることを、まだ多くの人たちが信じている。