錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

“キツイ時にナダル”で錦織完敗。
最高の気分で挑戦できる日は来るか。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2019/06/05 18:00

“キツイ時にナダル”で錦織完敗。最高の気分で挑戦できる日は来るか。<Number Web> photograph by Getty Images

クレーの最強王者ナダルに完敗した錦織圭。8強止まりでローランギャロスを後にした。

対ナダルで重要だった“気分”。

 どんなときでも同じことを同じように貫いて鋼のテニスを磨いてきたナダルに対し、錦織はより柔らかな発想と適応力でこの王者に挑んできた。

 錦織が1勝を挙げるまでにもっとも多くの対戦を要した相手でもあるが、2014年のマドリード・マスターズの決勝では勝利目前まで追い詰め、2016年のリオ・オリンピックでは銅メダル争いの一戦で勝利をもぎ取った。通算対戦成績がナダルの10勝2敗でも、こうした成功体験がある。

 しかし、11回の全仏オープン優勝を誇るナダルを相手にクレーの5セットマッチでその成功体験を生かすためには、錦織にとって重要な“気分”が相当乗っている必要があった。

クレーの王者を前に背負ったハンデ。

 ところが実際のところ、気分が良い状態であるはずはなかった。3回戦、4回戦ともに、ストレートセットですっきり終わるチャンスの大きかった試合をフルセットに持ち込まれ、ブノワ・ペールとの4回戦にいたってはセットポイントもあった第2セットを失ったせいで長引いた試合は日没のため2日がかりとなった。

 その2日目、第4セットから再開してさらに2時間を戦った錦織に対して、この日試合のないナダルはその前に軽く1時間の練習を終えていた。ここまでの試合時間をナダルと比較すれば4時間以上の差がある。

 クレーの史上最強王者と言われる選手と、クレーコートの最高峰であるローランギャロスのセンターコートで戦うというシチュエーションは、本来なら最高にエキサイティングな状況である。

 しかし、これまでグランドスラム後半戦のスタミナ切れに何度か悔し涙を流し、前半戦でのエネルギー消費を抑えることを長い間の課題にしてきた錦織にとって、今回もそれに失敗してハンデを背負ってしまったという後悔は、体だけでなく心にも重い負担を与えていたに違いない。

【次ページ】 「体力の限界がきている」

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