「論理的な理由を挙げてみますね」

　まったくの独り相撲となった原因を大坂はこう語った。

「私は論理的な人間じゃないけど、論理的な理由を挙げてみますね。多分、ナンバーワンとして初めてのグランドスラムということ、ここまでグランドスラム2大会続けて勝っていること、そしてこの大会でも勝ちたいという気持ちがめちゃくちゃ強いこと、シャトリエ（センターコート）で試合をするのが初めてだったこと」

　ナンバーワンになってからドバイ、インディアンウェルズ、マイアミ、シュツットガルト、マドリード、ローマと出場してきたが、シュツットガルトのベスト4が最高成績。淡白な敗戦もあれば、逆転負けもあったが、シュツットガルトの準決勝とローマの準々決勝は戦わずに棄権した。女王として背負う期待に応え続けられない脆さ、執念の希薄さが見え隠れしていた。

自分の横にある数字を考えすぎちゃう。

　全豪オープン後、今の大坂を作った最大の功労者と見られていたサーシャ・バイン前コーチを解任し、最近ではトレーナーを今季チームに加わったクリスティ・スター氏から茂木奈津子氏に戻した。チーム内の人事に頻繁に手を加えたことも、少なくともここまで明確なプラス効果として表れていない。

　そんな中で迎えた全仏オープンでの1回戦敗退はありえないことではなかっただろう。女王敗退のドラマがさまざまな言語で書き進められていた中で、しかし大坂はなんとか立ち直ってみせた。

「自分の名前の横にある数字をちょっと考えすぎちゃっている。いつもグランドスラムでは、もっと気楽に楽しめているのに。でも今日はそのことに気付けたし、今経験していることはすごく新鮮」

　学び、次に生かすことこそテニスプレーヤーにとって重要だと大坂は言う。そして幸せなことにテニスというスポーツはその機会にとても恵まれている、と。

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