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ブラッドJr.とAL新人王争い。
菊池雄星も含めてハイレベルの予感。
posted2019/05/25 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
ブラディミール・ゲレロJr.(以下ブラッドJr.と記す)が、ついに噴火した。
球界最大の有望株ともてはやされ、今年4月26日に待望の大リーグ・デビューを果たしたものの、最初の13試合は47打数9安打0本塁打(.191/.283/.234)の大不振。昨2018年、ルーキー・リーグからトリプルAまで4つのリーグを股にかけ、95試合で.381/.437/.636、20本塁打、78打点を叩き出した怪物とは思えない苦しみように、メジャーの壁の厚さを見せつけられたと感じた人は、少なくなかったのではないか。
そんな懐疑説が出はじめていた矢先、ブラッドJr.のバットは猛然と火を噴いた。
5月14日から19日までの6試合で、21打数7安打、4本塁打、9打点の荒稼ぎ。スラッシュを見ても.333/.417/.905、OPS=1.321という堂々たる数字が並ぶ。
1999年3月16日生まれだから、記念すべき第1号本塁打は20歳と59日で放たれたことになる。これは、所属球団ブルージェイズの最年少記録だ。豪快なスウィングは、18年に殿堂入りした父ブラディミール・ゲレロ譲りで、バットスピードなどは息子のほうが速く感じられるくらいだ。実戦に慣れ、気温が上がれば、反射神経や手の動きはもっと鋭くなるだろう。同じ背番号(27番)だった父と似ていないのは、体型がやや太め(体重113キロ)であることと、父ほどの悪球打ちではないことぐらいだろうか。
この快進撃をきっかけに、新人王争いに加われる可能性も出てきた。5月21日現在、出遅れが祟って、打撃成績は.247/.329/.438という水準にとどまっているが、最終的には.280/.420/.520ぐらいの数字は狙えるのではないか。本塁打も20本は超えられると思う。
新人王争いがハイレベルの予感。
ただ、今季のア・リーグは、新人王争いのレベルがけっこう高い。
とくに二塁手が豊作だ。ブランドン・ラウ(レイズ)やマイケル・チェイヴィス(レッドソックス)、ニッキー・ロペス(ロイヤルズ)といった新人トリオに注目が集まっている。
24歳のラウは、178センチ/83キロと小柄だが、41試合で.283/.333/.553、10本塁打という攻撃力を見せている。守備力も抜群で、とくに併殺を取る能力が高い。昨年は43試合に出場して6本塁打。その野球的知性を確信したレイズは、早くも8年総額4500万ドル(オプションを含めると最大4900万ドル)で契約を延長、彼をチームの核にしようとするプランを進めている。