欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
昌子源がフランスで大切にする事。
「ここは鹿島ではないと割り切る」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNoriko Terano
posted2019/03/04 12:30
リヨン戦の敗北は、昌子源にとって衝撃的な体験だった。それでも彼は、望んでこの場所にやってきたのだ。
欧州が日本の真上にあるわけではない。
――それでも、チャレンジ、ボールを取りにいかないと評価もされないでしょう?
「そうですね。行って抜かれるのは当たり前みたいなところもありますね。日本だったら、抜かれてしまえば『あいつ軽いな』ということになるけど、ここではそれは全然ノーマルなことで、しょうがないなと。だから監督もチームメイトも、僕がヘディングで勝てないことも当然だろうって感じなんです。まあ、190センチの選手同士が競うわけだから。俺が負けても問題にはならない(笑)」
――大岩剛監督が、「昌子は上のレベルへ行って引き出しを作っているんだろう』と言っていました。試合の結果なども結構把握されていましたよ。
「そうなんですか(笑)。でも、まだその段階には来ていないかな。ただ今思うのは、海外でプレーしてた選手がJリーグに復帰したら簡単にプレーできるだろうって思ってたけど、それはまったく違うなということですね。日本の延長線上、日本の上に欧州があるわけじゃない。上でも下でもないんだなと。
比べるものでもなくて、まったくの別世界だというふうに思いますね。たとえば、うちの選手しか知らないけれど、彼らは本当に負けず嫌い。1タッチゲームなのに、2タッチしただろうってケンカになるほど(笑)。だけど、プレーやサッカーに対しては非常に原始的というか、シンプルなんです。
たとえば、日本では最終手段だったスライディングが、こっちではファーストチョイスなんですよ。でも、相手もそれをかわすんじゃなくて真っ正直に突っ込んでくるので、結構それでボールが獲れることもある。そこで、ドリブルでかわすことができる選手が、リヨンやPSGにいる選手なんだと思う」
「めちゃくちゃキックが上手いな」
――欧州でも下位のクラブだと、選手の技術や思考力や発想力、そして視野などが、日本人選手に比べても低いと感じることがあるんですが、いかがですか?
「決定力が意外にないなと思うこともあります(笑)。攻めの部分では僕が起点になるんですけど、最近やっと、僕がボールを持ったときに、正確に出せるとわかっているからライン間で待っていてくれたりするし、『ここにくれ』と要求してくれる。それで、僕が試合でそこへパスを供給すると、『めちゃくちゃキックが上手いな、ボランチをやったらどうだ』って、言われたりして(笑)」
――言葉の壁はどうですか?
「わからないなりにフランス語と英語で頑張っています。わかっている単語だけでの勝負ですけど。『アレ』とか、『サバ』とか、『セボン』とか。まあまあという『タマル』も交えながら。あとは右、左、前、後ろもフランス語で使います。それでなんとか」
――他の選手へのダメ出しはできる?
「怒っている。納得がいかない。そういう感情は態度で伝えることができる。相手も言い返して来ますけど、言われっぱなしになることはないですね」