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武豊とルメール、尊敬しあう間柄。
「ユタカさんはずっと憧れの先輩」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/03/01 08:00
2018年末、自身の持つJRA年間最多勝記録に迫ったルメール騎手と言葉を交わす武豊騎手。
「タイ記録で良いでしょ?」
2人の会話にはまだ続きがある。「あと7勝」と答えたルメール騎手はさらに続けて言った。
「1日2勝ずつともう1勝でタイ記録。今年はそこまでで良いでしょ?」
これには武豊騎手も笑顔を見せるしかなかった。
翌週の土曜日、ルメール騎手は1勝するにとどまった。しかし、その翌日、有馬記念当日には5勝を積み上げる。これで年間の勝ち鞍は211。武豊騎手の大記録212勝にあと1と迫って12月28日の金曜日に行われた最終日の開催を迎えた。
この時、ルメール騎手の頭には、1年前の出来事がよぎったと言う。
「ちょうど1年前は199勝で最終日を迎えました」
過去には武豊騎手しか到達したことのないJRAでの年間200勝。その大台にあと1つと迫りながら、1年前のルメール騎手はその領域に足を踏み入れる事は出来なかった。最終日を未勝利に終わり、199勝でその年の全日程を終えたのだ。
「すごく残念でした」
普段は数字にあまり頓着しない彼が、珍しく唇を噛んでみせた。
武豊が語ったルメールの凄さ。
それから1年。今度は年間最多勝記録へのマジックを1として、最終日を迎えた。
この日、新たに生まれたリーディングジョッキーは、1年前とは違った。
中山競馬の第4レース、この日、2鞍目のレースを勝利して武豊騎手の持つ年間212勝と言う大記録に並ぶと、マイヨブランに騎乗した第6レースも優勝。あっさりとJRAの年間最多勝記録を更新。その後も勝ち鞍を伸ばし、最終的に215勝というとんでもない記録を樹立してみせたのだ。
この記録について、それまでの記録保持者である武豊騎手は言う。
「クリストフの素晴らしいところは沢山あるけど、例えば下手な先入観を持たずに乗れるところなどもその1つだと思います」