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<WBCコラム>
アジアの凋落と第三勢力。 

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出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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posted2017/04/06 07:00

<WBCコラム>アジアの凋落と第三勢力。<Number Web> photograph by Getty Images

イスラエルは捕手ラバーンウェイ(左)が好リードで継投策を支えた。

 熱闘、激闘、死闘が繰り返される日々。魂を何度も揺さぶられるような展開に、第4回WBCは観客動員も大会史上初めて100万人を突破した。

 かつてないほどの盛り上がりにはいくつもの要素がちりばめられているが、そのひとつに第三勢力の台頭がある。

 まず世界を驚かせたのは、予選から勝ち上がって初の本選出場を果たしたイスラエルだ。開催前の評価は低く、「1勝できれば」という程度のものだった。

 ところが開幕戦で韓国に延長10回、2対1で初勝利を収めると、プールAの優勝候補オランダも倒し、3連勝で2次ラウンドに進出。勢いは止まらず初戦のキューバ戦にも勝って4連勝。その後は日本、オランダに連敗を喫して敗退してしまったが、その統率の取れた戦いぶりは目を見張るものがあった。

「投手力とパワーのあるチーム。遠距離での試合になるけど、違う野球、異文化に触れることが楽しみ」

 こういっていたのは、1次ラウンドでMVPに輝いたライアン・ラバーンウェイ(アスレチックス傘下)だ。キャンプ地を出発する直前に「待ち切れない」という表情で語っていたのが印象的だった。

 イスラエル代表といってもこのラバーンウェイを含め、母国生まれはひとりだけ。ユダヤ系アメリカ人でメジャー経験のあるマイナーリーガーが大多数を占めた。しかし、ラバーンウェイは次のように語っていた。

「1月にチームメイト10人、首脳陣と一緒に生まれて初めてイスラエルに行った。球場は2つしかないけれど、これをきっかけに野球の普及に努めたいと強く思った」

 高いモチベーションだけではない。アメリカの大学野球で監督として800勝以上をマークしたジェリー・ウェインスタイン監督の基本を重視し、かつ最新データに基づいた緻密な野球が勝利に導いた。打者ごとに守備シフトを変えさせ、マジシャンのような継投をする。オランダ戦では実に9投手をつぎ込んだ。

 基本に忠実な野球の実践。イスラエルの野球はその大切さを改めて認識させたが、それはやはり本選初出場となったコロンビアも同様だ。アメリカ、ドミニカ共和国、カナダが居並び「死の組」といわれた強豪相手に大健闘した。

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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