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異常なデータが示す歴史的制球力。
NPB史上最高のK/BBは上原浩治!

posted2017/04/05 11:00

 
異常なデータが示す歴史的制球力。NPB史上最高のK/BBは上原浩治!<Number Web> photograph by Getty Images

「構えた場所に来るから受けるのが楽しい投手」という捕手のコメントは、投手にとって最大の褒め言葉の1つだろう。

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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 ベスト4に終わったものの、WBC2017では日本投手の優秀さが改めて認識された。特に制球力が素晴らしかった。

 日本投手陣が与えた四球は、7試合で13個。「9イニング当たりの与四球数」=「BB/9」は、1.80。これは、優勝したアメリカの1.90(8試合15与四球)を上回っている。

 100マイルのツーシームも、すさまじい変化のチェンジアップやスライダーもない日本投手陣が、各国の強大な打線を抑えることができたのは、制球力のたまものだった。もちろん、好リードをした小林誠司の存在も見逃せないが。

 どんなにすごい速球を投げることができても、ものすごい変化球があっても、ストライクゾーンに投げることができなければ絶対に勝つことはできない。野球とはそういうものだ。どんなに野球が進化しても、制球力が大事なのは変わらない。

「K/BB」という、投手の力に直結する数値。

 投手の基本的な能力を示す数値に「K/BB」というものがある。奪三振数を与四球数で割ったもの。単純な数字だが、この数値が高い投手は、三振(=もっとも安全なアウトの取り方)が多く、四球を与えない優秀な投手だということだ。

 2016年のNPB両リーグ規定投球回数以上の投手のK/BBベスト5は以下の通り。

<パ・リーグ>
1.石川歩(ロッテ)4.73 奪三振104 与四球22
2.則本昂大(楽天)4.32 奪三振216 与四球50
3.和田毅(ソフトバンク)4.13 奪三振157 与四球38
4.美馬学(楽天)3.63 奪三振116 与四球32
5.千賀滉大(ソフトバンク)3.42 奪三振181 与四球53

<セ・リーグ>
1.菅野智之(巨人)7.27 奪三振189 与四球26
2.石田健大(DeNA) 3.67 奪三振132 与四球36
3.黒田博樹(広島)3.27 奪三振98 与四球30
4.メッセンジャー(阪神)2.95 奪三振177 与四球60
5.ジョンソン(広島)2.88 奪三振141 与四球49

 両リーグのK/BB1位は、防御率1位でもある。この2人がWBCの第1戦、第2戦の先発をつとめたのはまさに順当だった。

 菅野智之のK/BB7.27は、すごい数字だ。2015年のK/BB1位がセはマイコラス(巨人)の4.65、パは則本昂大(楽天)の4.48だったことを見ても、この数字が並外れていることがわかる。

 昨年は打線の援護がなく9勝どまりだったが、投球内容はずば抜けていたのだ。WBCでの活躍も、当然のことだった。

【次ページ】 NPB史上最高のK/BBを持つ投手・上原浩治。

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