本継!SPORTS BOOKリレーBACK NUMBER
『ユニヴァーサル野球協会』誇大な“妄想”がゲームを動かす、アメリカならではの野球小説。
text by
堂場瞬一Syunichi Douba
photograph bySports Graphic Number
posted2018/02/28 15:00
『ユニヴァーサル野球協会』ロバート・クーヴァー著 越川芳明訳 白水Uブックス 1,600円+税
個人的には、ゲームにはまったく縁がないのだが、野球関係のコンピューターゲームっていろいろあるんですね。それにデジタルの世界だけではなく、「野球盤」というのも昔からあったわけで、野球はゲームと相性がいいのでしょう。そもそも野球の試合も「ゲーム」だし。
本書は、正確には「スポーツ小説」ではなく「野球ゲーム小説」である。
主人公のヘンリーは、会計事務所に勤める冴えない男。その彼が独自に野球ゲームを考案し、舞台として「ユニヴァーサル野球協会」という架空のリーグを設定した。ゲームで使われるのは、三つのサイコロだけ。出目によって、予め決められた状況が選ばれ、試合が進行していくスタイルだ。数字にこだわり、記録や統計を愛するが故に、ヘンリーはこのゲームに異様なまでにのめりこむ。やがて現実とゲームの境目が曖昧になって、彼の世界は崩壊していくのだが……。