濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
プロレスの価値観を揺さぶる“カリスマ”
DDT王者・佐々木大輔という男。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDDT Pro-Wrestling
posted2019/02/14 10:30
正論と破天荒さを両立させる男・佐々木大輔。ここ数年常にDDTプロレスの最前線で闘い、言葉を発してきた。
「おっパブで(自分の)誕生会やるぞ」
前述のディーノ戦では、敗者を棺桶にぶち込んでリングに置き去りにし、そのまま大会終了。『DDT総選挙』1位となって挑戦権を得た高梨将弘との初防衛戦に勝利すると、総選挙の賞金100万円をぶん取って、「おっパブで(自分の)誕生会やるぞ」。それが後楽園ホール大会、メインイベントの“締め”なのである。
2.17に向けた前哨戦でもある2月2日の6人タッグ王座戦で竹下にフォールを奪われると「目が覚めました」と改心。
「これからは正々堂々、クリーンファイトのベビーフェイスになります。コスチュームも白にしたい」とマスコミに語り、その4日後には「もう我慢できない!」とイスを振りかざした。
無軌道ぶりと鋭い指摘と。
一言でいえば無軌道。だが単にふざけているだけでもない。
ディーノには「10何年同じことしかやってない」と指摘。総選挙1位の高梨は「選挙の時だけファンにいいこと言って、普段は何やってんだ。前半の試合でも頑張ってる? 頑張ってねえから前半に試合が組まれるんだろうが」と突き放した。高梨は自分とゆかりのある選手の技も繰り出し“思い入れ”を武器にしたのだが、佐々木に言わせれば「特別な技ってのは、たまにしかやらないから浅いんだよ。自分のものになってないんだ」。
いかにもな悪役ではない。しかしコミカルなことをしているつもりもない。正論を突き刺したかと思うと下ネタを繰り出す。それが佐々木大輔の“闘い方”なのだ。
「プロレスは客の反応がすべてっていう考え方が最近のトレンドだけど、俺はそうは思わない。客を喜ばせるためにポップなことをするつもりもないし。客には“見てもらう”んじゃなく、見せつければいいんだ」