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年俸高騰でメジャーのFAが危機?
補強をへらす球団、高値を煽る選手。
posted2019/02/09 09:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
メジャーリーグ選手組合の礎を築いた初代専務理事マービン・ミラーが自著「A Whole Different Ball Game」の中で、こう言っている。
「毎年オフに選手全員がフリーエージェント(FA)になったら、野球界は契約を求める選手で溢れてしまい、買い手市場になって選手の報酬は下がってしまう」
今、メジャーリーグで起こっていることは、それに近いかもしれない。
今年もまた、ブライス・ハーパー外野手(前ナショナルズ)やマニー・マチャド内野手(前ドジャース)ら有力なFA選手が市場に残っている。Baseball-Reference.comによると、2月6日の時点で(旧チームとの再契約も含め)所属先が決まったFA選手は406人。決まっていない選手は274人もいる。
去年は最終的に416人が契約し、118人が契約しなかった(日本や韓国、あるいは米独立リーグと契約した選手、引退した選手を含む)。
1年前の論争がまた、再燃しそうだ。
選手組合はチームの出し渋りを批判。
去年の今頃、ダルビッシュ有投手(現カブス)やジェイク・アリエッタ投手(現フィリーズ)など、数多くの有力なフリーエージェント(FA)選手が市場に残っていたことで、メジャーリーグ選手組合専務理事のトニー・クラークがビジネス誌でメジャーリーグの各球団を批判した。
「3分の1ぐらいの球団が、(FAで補強せずに)競争に興味を失っている事態は憂慮すべきだ。それはチームとファンの信頼関係、さらに我々のゲームへの尊厳を脅かすものである。それがどのようにFA市場に影響し、シーズンに影響し、観客動員数に影響するのかは憂慮すべきことだ」
選手組合の長としては、正しい姿勢である。選手たちに不利益なことが生じているならば、自分が矢面に立って口を開き、それを質そうとする姿勢は頼もしい。