プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
IWGP王者・棚橋弘至に感じる不安。
2月の大阪で思い出す、あの敗北感。
posted2019/01/30 11:30
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
1.4東京ドームでケニー・オメガを倒して、IWGP王者に返り咲いた棚橋弘至だが、2月11日、大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)での初防衛戦を前に、不安が広がっている。
挑戦者ジェイ・ホワイトには勢いがある。ホワイトの試合運びにはそれほどの強さは感じないが、時代というか、時代の流れというか、そんなものを身にまとったホワイトは要注意だ。
どうしても、思い出してしまうのが、7年前、35歳だった棚橋が24歳のオカダ・カズチカにIWGP王座を奪われた時のことだ。
2012年2月12日の大阪府立体育会館だ。
棚橋時代からオカダ時代へ……。
試合前は余裕だったのに、まさかの王者交代となってしまい、リング上の棚橋自身が「信じられない」という表情を浮かべていた。そして、IWGPのベルトを巻き花道を両手を広げて悠々と引き揚げていくオカダの背中を、じっと見つめていたのである。
棚橋の時代からオカダ時代へのターニングポイントがあの大阪だった。棚橋はまるでトラウマにでもなったかのように、あの夜のことをしっかりと覚えている。
当時、オカダも期待された大型のレスラーだったが、今のホワイトもまた「新日本の希望」だと棚橋は表現する。
新日本プロレスで育ったホワイトは、デビュー当初から良いレスラーになる資質を備えていたが、2017年11月にアメリカ遠征から新日本に戻って来たホワイトは別のキャラクターに変身していた。
「スイッチブレイド」という名の、アメリカンなイメージを身にまとっていたのだ。