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オシム「愚かなプレーは無かった」
サウジ戦で見えた日本サッカーの進化。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/01/24 07:00
日本の攻撃陣は得点こそ少なかったが、試合を通して巧みな守備を敢行して完封勝利に導いた。
「まるでDFのように守備をしたFW陣」
「日本の攻撃はたしかに良くはなかった。連動性を得るまでにはもっと時間が必要だ。
だが、試合を重ねて、一緒にプレーする時間が長くなればそこもスムーズになるだろう。
しかし……悪くもなかった。
勇気と闘争心に溢れ、テクニックにも秀でた若い選手たちが、常に何かをしようと試みていたからだ。
その意欲と積極性は評価できる。また1対1での戦いでも臆さなかった。とりわけ守備の場面で攻撃陣の選手たちはよく仕事をして、まるでディフェンダーのような守備をした。
それは大きな前進であるといえる。というのも日本では、攻撃で人気者になるとまず守備の仕事をしなくなるからだ(笑)。
だが、今、彼らは守備をしはじめたわけだ。タックルをし、相手の選手を追いかける。そして守る――だから日本のサッカーは進歩した、と言える。誰もがすべての役割をこなす。とても大事なことだ。
今の日本は、かつてのイングランドやドイツのような存在になった。
どの対戦相手国も、日本にはもはやスペースを与えてはくれないだろう。相手が常に詰めているので日本の選手にスペースはなく、マークもきつく、昔のように自由にプレーするのは難しいはずだ。そうでなくても日本人は俊敏で機動性に富むと認識されているから、今では決して自由にさせてはくれないはずだ。
今の時代は攻撃の選手も守備の仕事ができるかどうかが厳しく問われるときだ。世界を見渡しても、優れた守備のできる選手はたくさんいる。
攻撃陣も守備陣も含めたすべての選手がふたつの方向――つまり前と後ろの両方に向けてプレーしなければならない。パスやドリブルを仕掛ける一方で、相手を追い、タックルをする……。そんなクオリティの高いプレーを続ければ、試合はますますスペクタクルで刺激的になる」