ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
石川遼が気づいた自分の本当の心。
「ゴルフがなくなったらオレ……」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/12/30 17:30
石川遼がいまもゴルフ愛を維持し、マスターズへの夢を持ち続けていることは日本ゴルフ界にとって大切なことである。
練習時間が業務に忙殺されていく。
池田勇太、宮里優作とつながれた会長職のバトンを引き継いだ初年度。コース上ではPGAツアーに倣って大会ごとにピンフラッグを販売し、来場者が選手からサインをもらいやすい環境を作った。ラウンド後のヒーローインタビューや、スポンサー向けに土曜日のプロアマ大会を実現したほか、ツアー外競技として大相撲の地方巡業をモデルにしたローカル大会を独自に立ち上げた。
国内での開催試合数が前年比で2試合(天災による中止1試合を含む)減ったにもかかわらず、年間の来場者数は4万4331人アップの33万7136人となった。
それでも、順風満帆だと言い切れるほど石川は楽天家でない。年間試合数は2019年に1試合減る。テレビの平均視聴率も復調傾向にあるが、平均4.2%は復調傾向にあるとはいえ低調だ。ちょうど10年前、プロ1年目に自身が巻き起こしたフィーバー時には到底及ばない。
「インタビューの時、圧倒的に『選手会長としてどう思いますか?』と聞かれることが多くなった。個人としての意見を求められることは少なくなった」という。すべての時間を自分のプレーのために費やせる環境ではない。これまでの練習時間が業務に忙殺されていく。
ゴルフがなくなったら生きる気力を失う。
会長職のため背広姿で東北地方を行脚した6月のある日のことだ。
復興支援のため福祉車両を寄贈するというセレモニーに出席していた石川は、中継地点の岩手で、ふと衝動にかられた。
「ゴルフ、やりたいな」
午後に盛岡駅に着くなり、マネージャーと近隣のコースを急いで探した。突然のプライベートラウンド。2サムで夕方の薄暮プレーを楽しんだという。
「ゴルフ場の貸しクラブで。なぜかボールが右にしか飛ばなかった(笑)。4時から1ラウンド(18ホール)回りましたよ。童心に返れた、というのはありましたね」。そううなずくほど、忙しさの合間にゴルフへの飢えは増していく。
ただ、改めて実感したこともある。
「やっぱりね……ゴルフがなくなったら、オレ、マジでなんも無いんスよ。マジで生きる気力を失う。全部の活動がゴルフと紐づいている。たぶんスーツ(の着こなし)も、自分がゴルフをやめたら求めない。ゴルフの時の反対側をやりたいだけだから。反対側が無くなったら何にもない」