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石川遼が気づいた自分の本当の心。
「ゴルフがなくなったらオレ……」 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2018/12/30 17:30

石川遼が気づいた自分の本当の心。「ゴルフがなくなったらオレ……」<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

石川遼がいまもゴルフ愛を維持し、マスターズへの夢を持ち続けていることは日本ゴルフ界にとって大切なことである。

会長職を成績の言い訳にはしない。

 多忙な職務に前向きでいられるのは生きがいの一部ゆえ。「10年前じゃ考えられなかったこと、(ツアーのために)コレをやった方がいいというのが自然と頭に浮かぶようになった。結局それもゴルフが好きだから。根本的に好きじゃないと務まらないんだと思う」

 そうであるからこそ会長職を、“本業”がもうひとつ振るわなかったことへの言い訳にするつもりがない。前任者の池田は在任中に必ず年間1勝し、宮里は2017年に賞金王になった。石川は今年4月の地方オープンで2勝したが、ツアーでは勝てなかった。賞金ランキング22位。厳しくも、周囲の期待を大きく裏切ったと言っていい。

 好結果を残せず、プレー中は肩を落とすことが多かった1年を「結果にとらわれ過ぎた」と逆説的に表現した。1勝を欲しがる焦燥感が募るあまり、突き詰めていたはずの内容を実は軽視し、上達の芽を勝手に摘んでいたかもしれない。

 そう気づいたのは、年の暮れだった。トッププロ30人が集った冬の日本シリーズJTカップ。滑り込みで出場したシーズン最終戦、それも最終日のことだった。

「(4月)東建ホームメイトカップで2位、(6月)福島オープンで3位に入ったけれど、今思うとそれまではまだ感覚が研ぎ澄まされていないというか……集中力が日本シリーズに比べると半分くらいでしかなかった。でも、思えばここ5年くらい、高い集中力でやった瞬間が少なくて。忘れていた感覚があった」

「自然体って、自然に一体化することなのかな」

 日本シリーズの最終ラウンドを、石川は首位に3打差の5位で迎えていた。「何番くらいだったかな……7番でバーディを獲った時くらい。真っすぐの上りのラインできっと入るだろうという状況だった。

 ここ5、6年はそんな『入ったら流れが変わる』という時に、流れをブロックしていたように思う。その流れに自分が乗ればいいのに、止めてしまう瞬間ばかりだった。イケイケのムードの空気に自分で何か亀裂を入れてしまうような……」

 バックナインにかけてスコアを伸ばし、静かに混戦となった優勝争いに加わった。

「11番、12番と良いバーディを決めた。そのパットも自分としてはその場の流れに任せていたというか。自分がホントに堂々とした“木”になったような気分だった。自然体って、いつも通りの自分でいることじゃなくて、その場その場で変わる自然に一体化するようなことなのかなって。昔、感じていた感覚はこうだったかなあって」

【次ページ】 「1000分の999、思った通りのパット」

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