ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
石川遼が気づいた自分の本当の心。
「ゴルフがなくなったらオレ……」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/12/30 17:30
石川遼がいまもゴルフ愛を維持し、マスターズへの夢を持ち続けていることは日本ゴルフ界にとって大切なことである。
「1000分の999、思った通りのパット」
トップで並んで迎えた72ホール目。最終18番で石川は入れば限りなく勝利が近づく7mのバーディパットを残した。東京よみうりカントリークラブの名物パー3は、ティから見てカップの左サイドにつけると、強烈なスライスラインが残る。
右に滑っていく下りのパット。実はシーズン終盤戦、石川が毎日練習してきたラインだった。ティペグをグリーンに差し、繊細なタッチを出す訓練をバックヤードで続けてきた。
あと2cm、いや1cmだっただろうか。
優しく、しっかりと打ち出したボールは傾斜で加速しながら、カップのわずか左奥を通過して悲鳴を呼んだ。
本人も「入ったと思った」。だが、「あそこに抜ける予感もしていました」という。直後に行われたプレーオフで小平智に敗れただけに、仕留めたかった1打に違いない。
「1000分の999、思った通りのパットでした。1000分の1、合っていなかった。打った時に『もしかしたら、ちょっと強いかもしれない』と思ったんです」。
マスターズはいつだって頭にある。
だが石川は、その“ちょっと”の感触に、2019年の光を見出す。
「外れたけれど、そう気づけたのは良かった。大事なのは打った瞬間に何を感じるか。『あれ以上のパットはできません』という気持ちになったら、もうお手上げだったと思う。1ミリ、2ミリという単位でタッチを出す練習をしてきたからこそ、その感覚に気づけた。成果は結果だけじゃない。打った瞬間に『何ミリ強い、何ミリ弱い』と感覚で分かるのも成果。そのために練習をしている。その感覚が分かれば、いざ、マスターズに行ったときに『入るんじゃないの?』と思えるんです」
マスターズ――。話の最後に、少しホッとした。忙しい日々を過ごしてはいても、今は遠くなった夢舞台について自ら言葉にした。
新シーズンは1月中旬にシンガポールでスタートする。休息できる時間は、しばらく来そうにもない。
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