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さらば王者。F・アロンソ、
三大レース制覇へ――新たなる出帆。 

text by

今宮雅子

今宮雅子Masako Imamiya

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photograph byMamoru Atsuta (CHRONO GRAPHICS)

posted2018/12/29 17:00

さらば王者。F・アロンソ、三大レース制覇へ――新たなる出帆。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta (CHRONO GRAPHICS)

2017年のインディ500参戦では一時トップを走った。歴史上グラハム・ヒルしか達成していない三大レース制覇はなるだろうか。

伝説的なアロンソのレース。

 '05年の第4戦サンマリノGPは典型的な例――終盤の12周、ミハエル・シューマッハーのフェラーリがルノーのギアボックスに触れんばかりの至近距離から攻撃を続けたシーンは、いまも鮮やかに心に残る。

「あの週末は、すべてがエンジンの問題を中心にして進んでいた」

 1基のエンジンで2GPを戦うことが義務付けられたシーズン。アロンソは第2戦~第3戦で連勝を飾ったものの、エンジニアたちはイモラに到着する前にV10の内部に傷を発見していた。

「エンジンを交換して10グリッド降格のペナルティを背負うか、なんとか凌いで4位、5位、あるいは6位でポイントを稼ぐか。僕らの頭にはそれしかなかった」

スペインでは空前のF1ブームに。

 23歳のアロンソにとっては、エンジン交換を済ませて"アタックあるのみ"というモードに切り替えるほうがストレスのない選択であったに違いない。しかしエンジニアと協議を重ねた彼は、傷ついたエンジンで戦い抜くことを選ぶ――すでに、タイトルを獲りに行くスピリットを備えていた。フリー走行ではほとんど走らず、それでも予選では2位グリッドを獲得し、レースではキミ・ライコネンのマクラーレンがリタイアした後、首位を守り続け、0.2秒差で勝利を飾った。

「これまででいちばんのバトルだった。次のスペインGPには、金曜日からたくさんのファンが来てくれると思う」

 4輪レースに馴染みのなかったスペインで、F1はブレイクを果たした。日曜の昼下がりに延々と続く昼食の習慣はグランプリで中断され、家庭の主婦さえタイヤの"コンパウンド"が何を意味するか理解し、バルセロナの週末には「アローンソ!」と繰り返す子供たちの声がこだました。

 シーズン中盤以降は、マクラーレンが速さでルノーを上回った。しかしノーミスのレースで堅実にポイントを重ねたアロンソは、最終戦を待たず、第17戦ブラジルGPで初めてのタイトルを獲得した。

 2週間後の鈴鹿、高速の130Rでアウトからシューマッハーをオーバーテイクした勇敢なシーンは、桁外れの技量と同時にタイトル争いからの解放を表していた。

「タイトルが決まっていたからリスクを冒すことも可能で、心からレースを楽しめた。ミハエルもキミもみんな後ろからのスタートだったからレースは驚きの連続だったね。ファンも喜んでくれたと思う」

【次ページ】 “外様”扱いが続いたアロンソ。

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