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高橋大輔、不変の魅力とスケート愛。
全日本選手権2位の「先」へ向かって。
posted2018/12/25 12:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
全日本フィギュアスケート選手権が終わり、プレスルームで世界選手権代表選手の名前が告げられた瞬間、明確な声にはならない、だがはっきりと耳に届くような、どよめきが聞こえた。
高橋大輔の名前が、世界選手権代表の中にないことが分かった瞬間だった。
全日本選手権は、近畿選手権、西日本選手権とステップを踏み、たどり着いた場所のはずだった。
ショートプログラムではすべてのジャンプを成功させ、演技構成点でも1位の宇野昌磨に匹敵する高得点を得て2位。復帰時の目標に掲げていた「全日本選手権の最終グループ」を実現し、迎えたフリー。
5番滑走の高橋の名前がコールされる。観客席に、ピンクと黄色のバナーが全面に掲げられる。声援が跳ぶ。
「まさか2位でフリーに挑むとは」
曲が流れる。静止していた高橋が動き出す。
冒頭、4回転トウループに挑む。
「6分間練習できれいに入ったので、やることに決めました」
だが、あいまいなジャンプとなり、結果、トリプルトウループとなった。
その後も2本のトリプルアクセルはきれいに決めたが、ジャンプで苦しむ。
「まさか(トリプル)フリップで手をついたり、(トリプル)ループでパンクしたり、フリップでコンビネーションつけられなかったり、あまりふだんしないようなミスをしたのが悔しいかな、と」
できるはずのジャンプでの失敗の原因を、自身ではこう分析した。
「いろいろな要素があると思うけれど、全日本の緊張感や、(ショートでの)2位を予想せずに臨んでいて、まさか2位でフリーに挑むと思わなかったので、欲とか緊張感に打ち勝つ力がなかったと思います」
それでも演技構成点での評価、ショートの貯金もいかし総合2位。2012年以来、6年ぶりに、全日本で表彰台に上がることになった。
それは、世界選手権代表が現実のものとして見えたときでもあった。