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浦和一筋で17年走り続けた平川忠亮。
小野伸二、大槻コーチらとのドラマ。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byJFA/AFLO
posted2018/12/15 11:30
天皇杯で有終の美を飾った平川忠亮。彼が過ごした17年間は、浦和がビッグクラブになる過程そのものだった。
オリヴェイラ監督からも賛辞。
「僕は『チームのために』と思えば、まったくきつく感じません。いつでも走り切れます。だから、ただ力を出し切ることだけを心掛けてきました」
12月9日の天皇杯決勝のあとの記者会見、オリヴェイラ監督に改めて、浦和にとっての平川について聞いた。指揮官は「サッカー選手の見本と言える存在だった」と頷いて言った。
「平川とは彼のキャリアの最後に短い期間とはいえ一緒になりましたが、2007年から11年の全盛期の彼のパフォーマンスもよく覚えています。私からもクラブに、『引退したあともクラブに残すべき人材だ』と訴えてきました。性格的にも非常に素晴らしく、サッカーに対し真摯です。今シーズンも、選手間のコミュニケーションの部分で大きな影響力をもたらし、練習でも見本となってくれました。若手を落ち着かせる声掛けもしてくれました」
J1通算336試合出場(9得点)は歴代68位である。実は彼を慕う柏木陽介は366試合、興梠慎三は378試合、西川周作は423試合と、しっかり後輩に抜かれている(阿部勇樹は歴代4位の563試合出場)。
でも、数字がすべてではない。サッカーの面白さであり醍醐味の1つを平川は証明してきた。
平川の足跡と8つのタイトル。
彼のサッカー人生にはいくつかの分かれ道があった。小さな分岐点だったかもしれないが、そこを曲がったあとに大きなドラマが待っていて、そのたびに人生は大きく動いていった。
小野伸二の登場、清商への誘いの一言、大滝監督、大槻さん、天野さんとの出会い、大学進学、浦和加入……。
そしてプロキャリアの最後は、リーグ戦最終節のピッチに立って勝利を収め、天皇杯を掲げて完結するという有終の美を飾った。エースや司令塔を支える存在として、その足跡を追えば、浦和が獲得してきた8つのタイトルすべてと結びつく。
4万6770人が平川に感謝を伝えたくてスタジアムに駆けつけた。そのように、人を惹きつけてきたのが平川忠亮だった。
これから指導者の道を歩むという。小野のようなスーパーなタレントも惹き込み、さらには平川のような「明るい努力家」も育ててほしい。
そして小野と再び、どんな形であれタッグを組むことはあるのか。本人たちにも全く読めない2人のドラマも、また新たなる展開を迎えるはずだ。