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浦和一筋で17年走り続けた平川忠亮。
小野伸二、大槻コーチらとのドラマ。
posted2018/12/15 11:30
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph by
JFA/AFLO
浦和レッズのみ、17年間プレーして引退する。
移籍の選択が当たり前になったサッカー界で、ひとつのクラブで戦い続ける選手は今や貴重で、「一筋」という言葉は特別な響きがある。
平川忠亮は出場機会を減らした2年ほど前から、引退について考えていたという。2014年に25試合を数えたリーグ戦の出場試合数は、'15年に8試合、'16年に0試合と大幅に減っていった。
17年、浦和一筋――。それは誰かに越されていくことを受け止めなければいけないという選択でもあった。
無論、プロフェッショナルとして勝ち残ってきた男だ。「越された」などとは決して思っておらず(あるいは受け入れず)、実際、平川には平川にしかない経験に裏打ちされた強みもある。自分が一番だという自負がなければ淘汰されてしまう、過酷な競争社会でもある。
その長い歳月の中での葛藤は、本人にしか分かりえない。相当なストレスとも常に向き合ってきたはずだ。
ただし、そんな平川が浦和にいたからこそ、その間に8つのタイトルを獲ることができた。
最終節は4万人超が埼スタに。
そんな彼が浦和にとってかけがえのない存在だったと知るからこそ、最終節、4万人を超すサポーターが埼玉スタジアムに訪れた。平川を送り出そうと、2006年や2007年のユニフォームを着ている人の姿も少なくなかった。
オズワルド・オリヴェイラ監督は、12月1日のリーグ戦最終節のFC東京戦、最後に平川を投入して、3-2の逃げ切りに成功した。そこで平川を中心にサポーターと選手・スタッフの一体感を改めて生み出し、浦和の火を改めて灯して、その後の天皇杯制覇につなげた。
39歳まで、右サイドを疾走し続けた。試合終盤の苦しい時間帯に豪胆な攻め上がりを見せ、どこにそんなスタミナがあるのか! と驚かされたことは何度もあった。