第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
5年連続のシード権獲得に挑む。
中央学大に見る“弱者の兵法”。
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byAFLO
posted2018/11/15 11:00
前回大会では最終10区を走った藤田大智(右)が14秒差で逃げ切り、シード権獲得。
スピード練習にも独自の考えが。
近年、よく話題に挙がるスピード練習についても思うところはあるという。
「スピード練習も木原('06年1区区間賞、'08年'09年2区区間3位)を見てしまったあとは他の選手にもさせたこともあるんですけど、それはことごとく失敗しました。なのでこの5年は一切やっていません。8月の合宿では30km走もやって、そこからは少しずつ箱根駅伝に対応できるように距離を伸ばしていきますが、その前のトラックシーズンではロードも走らないし16000mより長く走ることはありません。多分、大学の中では一番質が低くて、主練習だけを見れば高校生がやるような練習しかしてないですね。
でも、そのかわりに基本的な補強や終わってからのジョギング、動きづくりに関しては手を抜かないし、むしろ主練習よりも大事にしています。最大の目的は主練習をいかに余裕を持ってできるか、疲労を翌日に残さないか、ということなので。いくらいい練習をしても、選手がつぶれたらおしまいなんです。できる練習を確実にやって、積み重ねる。今いる選手は40人中30人は1万mを29分台で走っているけれど、ちゃんとやることをやっていれば誰でも29分台では走れるようになると思っています」
画一的な練習にならないように。
練習の強度を上げない分、大学の4年間で競技をやりきって引退しようと考えている選手や、将来マラソンをやりたいと思っている選手たちには「僕の練習は質が低いだろうから、練習量を増やしたり、自分で考えてごらん」とアドバイスをしたり、長い距離が好きな選手には、距離走を増やしたりと個々のアレンジは意識してするという。できるだけ、画一的な練習にならないように心がけている。
「たぶん大学の指導者の中ではトップを争うくらいに、選手の指導には手をかけていると思います」
個々に対する指導の重要性――選手にかける愛情の深さには、川崎の自信がのぞいた。
「私の考えとしては、大学の4年間で完成させないというのが一番ですね。夢は卒業した選手が五輪に出てくれることです。世界選手権にはこの前初めて潰滝大記(現富士通)が出てくれましたが、そういう子を一人でも多く出したい。最近は高校生に声をかける時でも、彼らには『君たちの陸上人生の途中の4年間を見させてくれ』としか言わないですね。大学で全部やりつくすのではなく、できたら実業団まで行って続けて欲しい。そこまでの途中の過程をしっかりやらせてもらうから、距離をガンガン踏ませることもないし、土台だけしっかり作って上のレベルで活躍できるようにしたいんです」
陸上競技はあくまでも教育の一環。
陸上競技部の活動も「クラブ活動ですから」と言い切る川崎監督は、陸上競技専任の監督ではなく、法学部の教授として教鞭もとる。一般学生の授業でも遅刻は一切認めず、スマホを出していたら教室から退出させる。そんなルールを徹底しているが、そういう部分は選手も一般学生も変わらない。