第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
5年連続のシード権獲得に挑む。
中央学大に見る“弱者の兵法”。
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byAFLO
posted2018/11/15 11:00
前回大会では最終10区を走った藤田大智(右)が14秒差で逃げ切り、シード権獲得。
箱根駅伝は“教科書的な存在”。
また、最近では箱根駅伝の区間配置もほとんどはマネージャーや選手に投票させて決めているという。
「7~8年前からそうやっていますね。こちらも迷うこともあってマネージャーに相談していたんですが、そういう時に迷うなら、いっそ学生に決めさせればいいと思って(笑)。私が客観的に見るのと彼らが見るものが違う時もありますが、駅伝は信頼関係で走るもの。だから、君たちが『こいつなら任せられる』というのを出してくれと」
そう言って笑う。
「箱根駅伝で優勝したらかっこいいけど、うちでそれは絶対に無理ですから。強引にやろうとすると無理も生じるので、狙いません。でも、いろんな意味で注目される大会だから、私は、箱根駅伝は“教科書的な存在”だと思っています。あの舞台に立つというのはいろんな人たちに注目され、観られること。だからこそ、やるべきことをしっかりやらなければいけない。その点では選手を育てる、育成するためには本当にいい大会だと思います。そこで無理をすることなく、自分の足元を見極めてしっかり結果を出す。それをやれば彼らも『俺はやれる』と自信を持つと思います」
区間1位を狙うのではなく、着実に自分の力を出し切って10位以内の走りをする――それこそが川崎監督が駅伝で選手たちに求めるものだ。
10月の出雲駅伝は主力の高砂大地(3年)と横川巧(3年)が故障で出ていないにも関わらず、6位に食い込んだ。11月の全日本大学駅伝では彼らを使えない中で、後半区間で粘り切れずに14位に終わったものの、川崎監督の表情に迷いはない。
「もう今年は高砂と横川を使えないことを前提に考えていますから」
そうあっさりと言えるのも、陸上競技の指導は「あくまでも教育の一環」で、結果は二の次という、強い想いがあるからなのかもしれない。