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ベレーザ、不満顔で4連覇を達成。
圧倒的に高い目標と控え目な監督。
posted2018/10/30 16:30
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Tetsuro Kaieda
そこに満ち溢れるような歓喜はなかった。粛々と整列し、相手と健闘を称え合う。勝てば、優勝。すなわちリーグ4連覇達成。知らなかった者はひとりもいない。晩秋のピッチを、風が音もなく通り抜けた。
10月27日、プレナスなでしこリーグ1部第17節、首位の日テレ・ベレーザはAC長野パルセイロ・レディースと対戦し、長谷川唯と籾木結花の得点で2-1の勝利。最終節を残し、4年連続16回目のリーグチャンピオンに輝いた。
今季、すでにリーグカップを制しているベレーザはこれでふたつのタイトルを手中に収め、残すは皇后杯のみ。三冠にリーチをかけているが、目指しているのはそこですらないのかもしれない。
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不安材料には事欠かないシーズンだった。チームを率いるのは、育成年代では豊富な指導実績を持つがトップは男女とも未経験の永田雅人監督。代表選手を多く抱える都合上、練習で共通理解を深める時間の不足やメンバーのやり繰りに苦労が付きまとう。さらにシーズン序盤、3年連続リーグMVPの大黒柱、阪口夢穂を重度の故障で失った。
岩清水梓が感じた手応え。
阪口とともにチームを支えるベテラン、岩清水梓は言う。
「監督が代わって新しいやり方にチャレンジし、全員揃ってトレーニングする時間が少ない難しさはあったんですが、そこは試合をやりながら合わせていった感じですね。最初の時期は負けたり引き分けたりして、第5節の浦和レッズレディース戦だったかな、キーポイントに触れた感覚があったんです。なぜ自分がこの立ち位置を取らなければいけないのか。周囲と連動するタイミング。ああ、永田さんの言っているのはこういうことか、と」
きっかけを得て、シーズン中盤は破竹の9連勝だ。最後は2位のINAC神戸レオネッサら後続を悠々と千切った。
「若い選手たちの成長も大きいと思います。今季からキャプテンになった田中美南、籾木や長谷川も自分がチームを引っ張っていくんだというプレーを見せてくれました」(岩清水)