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大谷翔平の水原通訳が見た「翔平のぶちキレと可愛い日常」 チームメイトから「アメリカ人の彼女はできた?」と聞かれると…
posted2021/07/13 18:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Yukihito Taguchi
常に温厚、完全無趣味? いえいえ、そんなことはありません。
二刀流を最も間近で支える男が語る、翔平青年の意外な素顔。
◆◆◆◆◆
検査の結果、初めてトミー・ジョン手術を勧められたときにはさすがに僕もショックで、落ち込みました。6月から翔平が6週間のリハビリを頑張ってきて、ブルペン、実戦形式のピッチングを経て、まだ(9月2日の)1試合に投げただけなのに、靭帯はこんなに悪化しちゃうものなのかと……本人もきっとショックだろうなと思って、ふと見ると、いつも通り、ニコニコしてるんです。ああ、翔平はどこかで覚悟していたのかな、と思いました。だったら僕がクヨクヨしてる場合じゃないし、切り替えなきゃと思って、提案されたいろんなプランを訳して伝えました。来年はバッター一本で行くことになるかもしれないという話に、翔平は「それはそれで楽しみですね」と言っていて、そこはちょっと救われた気がしましたね。
翔平は僕より10歳下なんですけど、ファイターズへはたまたまの同期入団なんです。最初は特別、仲がいいという感じではなかったんですけど、翔平のロッカーが、当時、僕が通訳をしていたルイス・メンドーサの隣だったので、けっこう話す機会はありました。「もし僕がアメリカへ行くことになったら一緒に来て下さいね」なんて、冗談っぽく言ってくれていたこともあって……翔平のプレーって、見てるだけでワクワクするじゃないですか。二度と現れないだろうという特別な選手ですし、性格もあの通り、すごくいい子ですから、そういう仕事があるなら、メチャクチャやりたいと思っていました。
ニュアンス重視で、伝わりやすく。
通訳をするとき、そのまま訳すのか、ニュアンスを汲み取って伝えるのか、難しい選択を迫られることがあります。僕はニュアンス重視で、なるべく翔平に伝わりやすい言葉を選んで伝えているつもりです。とはいえ、翔平がジョークのつもりで言う「うるせーな、お前」みたいなことは、そのまま訳しますね。
チームのみんなからよく訊かれるのは、「ショーヘイに彼女はいるのか」「アメリカ人の彼女はできたのか」ってことばっかり。そういうとき、翔平は首を横に振るだけにすると決めているようです(笑)。
あの時、翔平がぶちキレた。
6月6日、DL(故障者リスト)に入るきっかけとなったロイヤルズ戦は大変でした。4回を終わってベンチに戻ってきたとき、翔平が「ちょっとヒジが張ってるんですよね」って言うんです。ピッチングコーチのチャールズ・ナギーが飛んできて、「大丈夫か」って……その回の翔平は荒れていて、タイムリーを打たれたりフォアボールを出したりしていたので、もしそのまま訳したら絶対に降ろされると思いました。本人がそれを望んでいないこともよくわかっていましたが、何といってもヒジのことなので、取り返しのつかないことになったら大変だと、そのまま伝えました。
それがマイク・ソーシア監督に伝わって、5回、いったんマウンドに上がって投球練習をしたんですけど、そのまま降板させられました。