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小平智「まだ18歳くらいの感じ」
米ツアー2年目の目標はまず2勝目。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/10/11 07:30
ツアーの勝者には多大な敬意が払われるのがゴルフ界の常だが、小平智はいつでも「下から目線」の挑戦者だ。
ドライバーに書かれた「MMONMK」
もうひとつ、小平が苦しんだのがドライバーの選定だ。
昨年秋にクラブのヘッドが破損してからというもの、代役探しの悩みがいつも付きまとった。それほど、彼のゴルフはティショットの正確さが生命線。同じモデルでも、ロフト角や重心位置を変えたバージョンの数は、十数本どころではない。PGAツアーの優勝も、そのジレンマの中で勝ち取った。
小平のドライバーのヘッドカバーにはいま、マジックで「MMONMK」とアルファベットが書き記されている。美保夫人の「M」以下、マネージャーやキャディら自身のサポートスタッフの名前の頭文字である。「たいした意味はないんですよ。ヘッドを試しすぎて、エースのドライバーがどれだか分からなくなってしまうから」と苦笑いする。
天国と地獄を味わった28歳の後半戦。それでも本人は望んだ結果を残せなかった5月以降も「めちゃくちゃ苦しい、というほどではないんです」と振り返る。
理由はシンプル。
「だって、楽しいから。ドライバーが決まらなかったり、調子を崩したり……。そのへんは苦しかったですけど、ゴルフの楽しさは変わっていない」
「一番の難しさは、やっぱりレベルの違い」
連戦、それに伴う短期間での長距離移動。疲労は蓄積したが、今秋始まる2年目は違う心持ちで臨むことができる。「日本ツアーとは違って、試合の数がいっぱいあるから、これからは自分で試合を選んで出ればいい。疲れれば、休めばいい」と前向きだ。
「一番の難しさは、やっぱりレベルの違い。それは格段にある」
一時帰国中に出場した日本ツアー・トップ杯東海クラシックは17位だった。事前調整が不十分な状態で残した成績に「まったくゴルフをしないで、あの順位で終わることはまずPGAツアーではない。予選を通ったとしても50位とか、60位といった感じ」と、改めて世界のトップ集団との差に思いを巡らせた。ただ彼らとのギャップは、あって然るべきもの。それを埋めるために、海を渡った。