所「主人公が自分の息子みたいに見えて」

――『ムタフカズ』の完成版は、試写会でご覧になったそうですが、普段、自分の試合は、映像で確認するのですか？

中村　自分の試合を見るのが苦手なんですよね。研究や反省のためには見るんですけど、鏡で自分の顔もあまり見ません。

所　　僕は、良い勝ち方をしたときは……。

桜庭　え？

所　　悪い試合は一切見ないです。

桜庭　悪いときほど見ないと。僕はだいたい見ますね。試合直後って、「あそこでこうしておけばよかった」と思うんですけど、2、3日経って映像を見ると、思っていたのと違ったなってことがあるので。負けた試合にも、勝った試合にも、絶対に自分がやらかしているシーンはある。こうすれば相手に良いポジションを取られなかったなとかを考えて、それを次の練習で試したりしますね。

――『ムタフカズ』の「ルチャ・ウルティマ」は、地球を守るために闘っていますが、御三方は格闘技をやる上で「何かのために」「誰かのために」と考えることはありますか？

桜庭　僕は単純に、目の前の相手からギブアップを取りたい。ただそれだけです。その姿をお客さんも一緒になって見てくれたらいいかなと。

所　　昔は、もちろん自分のためにやるだけだったんですけど。今は自分のジムも開いたので、試合で勝てば会員さんも喜んでくれます。それによって箔がつくというか、説得力が生まれるので、どんどん試合に勝っていきたいなって気持ちはありますね。背負うものができたというか、商売というか。

桜庭　はっきり言ってしまえば、仕事だもんね。

中村　僕は結局、好きだから格闘技をやっているだけなんです。子供が生まれたときに、一度就職しようかなとも思ったんですけど、やっぱりこれはやめられないなって。いまだに格闘技が好きですし、楽しいですし、桜庭さんのような先輩たちもすごく楽しみながら格闘技をやっている。その姿を見ると、もっと頑張ろうとか、楽しいなと思う。それが一番ですね。

――それでは最後に、あらためて『ムタフカズ』の見どころを。

桜庭　僕らの演技はさておき、主人公3人のキャラクターの違い、個性がおもしろいですよ。その描き方も、外国の原作ならではで楽しい。

中村　頭の上で火が燃えていたり、独特ですよね。アクションシーンも迫力がありますし。

所　　主人公のアンジェリーノに感情移入しちゃって、だんだん自分の息子みたいに見えてきたんですよね。

桜庭　あとは、やっぱり所くんの鼻歌だね。

中村　桜庭さん、スタジオで肩を震わせながら笑いをこらえてましたもんね（笑）。