中村「恐怖を感じた練習は……」

――格闘家がお客さんに「伝える」という意味では、マイクパフォーマンスを求められることも多いと思います。何を言うかは、事前に考えているのですか？

桜庭　人によるんじゃないですかね。

中村　自分はあんまりマイクをやったことがないんで。

所　　僕は、お礼を言ってほぼ終わりです。

桜庭　まずはお礼ですよね。僕は勝ったときと、負けたときのパターンを考えてます。

――一番盛り上がったのは？

桜庭　んー……、自分の素が出たのは、「QUINTET」でメダルを渡すときに、表彰の曲の出だしを僕が口ずさんで、その続きをお客さんに歌って欲しかったんですよね。イメージとしては『笑っていいとも!』のBGMで、お客さんが「いいとも！」って言う感じなんですけど。

所　　ホイラー（・グレイシー）戦の「次はお兄さん、僕と勝負してください！」じゃないんですね。

桜庭　あのときは、俺が勝ったらヒクソンが出てくるっていう条件だったから。それをつなげるために、あのセリフを言っただけで。一応、セコンドにも「こんな感じで言っちゃっていいですかね？」って、確認したんだよ。

――『ムタフカズ』では、3人が演じるレスラー軍団が銃弾を避けながら敵のアジトに乗り込むシーンがありました。実際の格闘技で、恐怖を感じることはありますか？

桜庭　格闘技に関しては、恐怖はないです。レフェリーがいるから。もうダメだと思ったら、レフェリーにダメだって言えばいいし。

所　　その考え方、びっくりですね。

中村　僕も相手に対しての恐怖は、ないですね。でも、この間、追い込みの練習で酸素を取り込む量を制限するマスクをして、酸欠になったときは死ぬかと思いましたけど（笑）。あれ以来、恐怖症みたいになって、あのマスクをつけただけで心拍数が上がっちゃいます。

所　　僕は試合で相手が強いということもあったんですけど、「ここで負けたら終わっちゃうのかな。もう、終わりなのかな」みたいな怖さはありましたね。

桜庭　私生活での恐怖なら、いっぱいあるけどね（笑）。

――ちなみに？

桜庭　この間、車で実家に帰ったときに、長時間の運転で腰が痛くなっちゃって。運転しながら、足をハンドルの横に置いてストレッチしようとしたら、エンジンのボタンを押しちゃって、エンジンが止まった。ちょうどカーブの手前でパワステが効かなくなって、「やべえ！」って（笑）。慌ててボタンをもう一度押したら、復活したんだけど。

中村　やめてください（笑）。僕の一番の恐怖は、僕が酒を飲んでベロベロになった日の、ウチの嫁です。こんなこと言ったら、怒られちゃうな。

【次ページ】　所「主人公が自分の息子みたいに見えて」