酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
打者・大谷翔平の進化が急激な分、
ブランクの発生がなんとも口惜しい。
posted2018/09/23 08:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
AFLO
大谷翔平がエンゼルスのチームドクターから「トミー・ジョン手術を受けたほうがいい」とアドバイスされたのは日本時間9月6日のことだ。その判断は本人に委ねられているようだが、大谷は結論を出さないまま試合に出続けている。日本の医師にセカンドオピニオンを聞きに行くともいわれている。
大谷の気持ちはわかる。彼は今、野球が楽しくて仕方がないのだろう。
アメリカに来て、打者・大谷翔平は確実に成長している。NPBの一線級打者でMLBに挑戦した選手は16人になるが、大きな壁にぶち当たることなく成績を伸ばしたのは大谷だけだ。これは本当にすごいことだ。
MLB移籍で数字が伸びた唯一の打者。
RC27というセイバーメトリクス系の指標がある。これは安打、長打、盗塁、盗塁死、四死球、三振、犠打、犠飛というオフェンス面の数字を加味し、打者の得点能力をみるものだ。
1人の打者が1試合打席に立ち続けて27回アウトになる前に、何点取れるかという数字だ。5.0前後が標準、6.0で強打者、9.0あればMVP級となる(現実にはマイナス得点は存在しないが、計算上マイナスになることもある)。
日本人打者のNPB時代のRC27と、MLBでの数値を対比するとこうなる。NPB時代の数値は、MLB挑戦前まで。復帰後の数字は含んでいない。
%はMLBでの成績がNPBでの成績からどれだけ変化したかの数値。2001年のイチローを皮切りに、MLBへ挑戦した年代順にならべる。
イチロー 8.73→5.67(64.9%)
新庄剛志 4.34→3.77(86.9%)
田口壮 4.45→4.36(98.0%)
松井秀喜 8.80→5.93(67.4%)
松井稼頭央 6.58→4.63(70.4%)
中村紀洋 6.31→-0.54(-9%)
井口資仁 5.73→4.81(83.9%)
城島健司 6.23→4.17(67.0%)
岩村明憲 7.00→4.90(70.0%)
福留孝介 7.96→5.04(63.3%)
西岡剛 5.76→1.88(32.6%)
川崎宗則 4.75→3.26(68.6%)
青木宣親 7.21→4.93(68.4%)
田中賢介 5.08→4.58(90.0%)
大谷翔平 6.50→7.98(122.8%)
このほかに、中島裕之(当時西武、現宏之)が2013年にアスレチックスと契約したが、彼はMLBに昇格できずに帰国している。
イチローから田中賢介まで、大谷以前のすべての選手が数字を落としている。長打力がある打者の方が大きな数字になるから、NPB時代に長距離打者だった選手の方が落ち込みが激しい。