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2時間1分台の世界新より恐るべき、
キプチョゲの「ラスト2.195km」。 

text by

金哲彦

金哲彦Tetsuhiko Kin

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posted2018/09/22 11:00

2時間1分台の世界新より恐るべき、キプチョゲの「ラスト2.195km」。<Number Web> photograph by AFLO

ベルリンマラソンで世界新を叩き出したエリウド・キプチョゲ。終盤のラストスパートは驚異的なタイムだった。

残り2.195キロのペースに仰天。

 この10年で5回も世界記録がマークされたベルリンマラソン。好記録が出る要素は3つある。アップダウンがほとんどない高速コース、暑すぎず寒すぎない絶好の気候、そして、高速レースにも対応できるペースランナーの存在だ。

 それゆえケニア、エチオピアを中心に世界記録更新を目指すトップランナーが毎年集まる。今回も25キロまで5キロ14分20~30秒台の安定したペースでレースは進んだ。25キロを過ぎてペースランナーがいなくなってからも、キプチョゲは単独でそのペースを維持した。

 そして最後がすごかった!

 40キロ地点を過ぎた残り2.195キロをキプチョゲはとんでもないダッシュでフィニッシュまで駆け抜けたのだ。

前半ハイペースでも十分な余力。

 私は、2時間1分39秒の世界記録にはさほど驚かなかったが、この最後のペースアップには仰天した。

 タイムは、2.195キロ=6分7秒。

 これは、5キロに換算すると13分55秒のペースである。フルマラソンで、これほどのラストスパートは未だかつて見たことがない。

 つまり、前半からハイペースでレースを運びながらも、キプチョゲはかなり余力を残しながら走っていたことになる。

 たとえいかなるレース展開になっても彼に勝てるランナーは今の世界には存在しないだろう。このモンスター選手の存在を、2年後の東京オリンピックまで私たちは常に念頭に置かねばならない。

 そして、ベルリンマラソンに出場した日本選手の動向にも触れておかねばならない。

 男子では、すでにMGC出場権を獲得している中村匠吾(富士通)が2時間8分16秒の自己新で4位に入賞したが、35キロからの5キロで16分かかってしまい、失速感が否めないレースとなった。

【次ページ】 神野大地はほろ苦いデビュー戦に。

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