燕番記者の取材メモBACK NUMBER
38歳で奮闘するヤクルト石川雅規。
今なお先発を任せられる理由とは。
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph byKyodo News
posted2018/09/05 07:00
円熟味のピッチングで相手打者を幻惑する石川雅規。ヤクルト投手陣にとって最高の見本だ。
年寄り扱いは嫌だからこそ。
石川の負けん気を、何げない会話で実感したことがあった。6月のサッカーW杯の開幕前だった。平均年齢が過去最年長の28.3歳で「おっさん」と言われていた日本代表の、新聞紙上での下馬評が低かった。石川はそこに、違和感を覚えていた。
「ベテランは経験があるのが強みですよ。下馬評は関係ないですよ。日本の代表なので、下馬評を覆してほしい。楽しみだし応援しています。日の丸を背負って戦う人のすごさ、格好良さがあると思うし、長年代表にいる人は、酸いも甘いも知っている。やってくれますよ。つべこべ言わず、応援しましょう!」
石川の“予言”通り、日本代表はグループリーグを突破してベスト16入り。「おっさん」と言われていた侍たちが、日本中を熱狂させた。「僕は年齢でスポーツをするわけじゃないと思います。年寄り扱いは嫌。僕も粘り倒したいですね」と、目尻を下げた。若い選手には簡単にポジションを渡さないという強固な意志が、言葉の間からあふれだしていた。
8月19日に約2カ月ぶりとなる白星を挙げ、通算200勝まであと38勝。「目標というには、まだ現実的な数字じゃないですよ」と笑った。年齢という物差しで見れば、通算200勝達成は厳しい数字なのかもしれない。
だが石川なら……と思う。ヤクルトの偉大なる小さな左腕が大きな勲章を手にすることを信じ、「記者あるある」にならって、最年長の200勝達成者は当分、調べないつもりでいる。