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レアルの日本人社員だった男。
酒井浩之「実は言うほどお金がない」
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byYuki Suenaga
posted2018/09/05 17:00
外から見るか中から見るかで、レアル・マドリーの印象はどうやら大きく違うらしい。酒井氏はその実情を知る唯一の日本人と言ってもいい。
独裁的な会長の金満クラブ、ではない。
「レアル・マドリーの選手として引退させたかった、というのがペレス会長の本音でしょう。しかし、引退されたら、移籍金は入らない。経営者として、クラブを第一に考えれば、売る必要があるんです」
時には非情な決断を下さなければならないというわけだ。先のロシア・ワールドカップでMVPに輝いたルカ・モドリッチも、9月9日で33歳。いずれは「CR7」と同じ運命をたどることになるのかもしれない。
独裁的な会長(ペレス)の傲慢な経営による金満クラブ――。酒井氏もレアル・マドリー大学院の門をくぐるまでは、漠然とそんなイメージを抱いていたという。虚像と実像のギャップは想像以上に大きいものらしい。ペレス会長と太いパイプを持つ数少ない日本人だからこそ、見えてくるものがある。
「何しろ、ペレス会長自身がソシオの一員ですから。そもそも会長になったのも経営危機に直面していたクラブを救わねば――という強い思いからです。気まぐれや独断で物事を進めるような人だったら、いまのマドリーはなかったでしょうね」