プロ野球亭日乗BACK NUMBER
大谷翔平の本塁打量産を支える
“最強アオダモバット”の秘密。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2018/08/10 11:30
メジャーでも屈指の飛距離を誇る大谷翔平の打球。その大きく美しいホームランは、見る者すべてに爽快感を与えてくれる。
バットの原木になるまで60年以上!
アオダモは折れやすい。
特に手元で微妙に動くメジャーのボールを相手にすると、やっかいなのは間違いない。
それでも打者・大谷はメジャーの投手のボールに徐々にアジャストしてきた。最近は滅多にバットを折らなくなってきているのが、その証とも言えそうである。
アオダモはバットの原木として使えるまで成長するのに60年以上かかり、しかも1本の原木から作られるバットは4本から6本だという。かつては日本の木製バットのほとんどがアオダモ素材だったが、今は原木不足が深刻で、アッシュやメープル素材にとって代わられている。
NPBでも少なく、米国では大谷だけかも!?
日本のプロ野球界でもアオダモのバットを使っているのは西武の中村剛也内野手、中日の平田良介外野手に広島・松山竜平外野手らわずか数人しかいなくなった。彼らにしても、松山はアオダモ素材を求めてメーカーを変え、平田は年間でたったの10本しか試合用として供給してもらっていない。
それでもアオダモの独特な打感としなりでスイングを作ってきた選手にとっては、替えがたい感触があるわけだ。
もともとバットといえばホワイトアッシュが主流で、今はより固いメープル全盛のメジャーでは、おそらくアオダモのバットを使っているのは大谷ぐらいなものだろう。
もちろん扱いは難しい。
ただ、この希少素材のバットには独特のしなやかさがある。
そのしなりが大谷という打者の力を最大に引き出す、最強の武器になるのである。