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大谷翔平の本塁打量産を支える
“最強アオダモバット”の秘密。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2018/08/10 11:30
メジャーでも屈指の飛距離を誇る大谷翔平の打球。その大きく美しいホームランは、見る者すべてに爽快感を与えてくれる。
ダルビッシュがバットを折るのは当然。
メジャーの動くボールだと、松井さんや福留ら一流打者ですらアオダモ素材のバットは非常に折れやすいのである。
ましてや投手でたまにしかバットを握らないダルビッシュがアオダモのバットを使えば……。打撃練習とはいえ、あっさり折ってしまうのも仕方ないことだったのである。
だが、このアオダモは使いこなせると強力な武器になり、大谷の格段の飛距離の秘密も、実はこのバットが大きな役割を果たしているのだ。
「力強く打てているのがいい。そっち(左翼)の方向にしっかり飛距離を出しているというのは、すごくいい傾向だと思います」
8月7日のデトロイト・タイガース戦。1回無死一、二塁から今季12号の逆転3ランを放った大谷の試合後のコメントだ。
大谷のバットはゆっくりに見える?
大谷はこの4日前、3日のクリーブランド・インディアンス戦ではメジャー初の1試合2本塁打も記録。第1打席の1回1死一塁から放った一打は、やはり逆方向の左翼に打ち込んだもの。3回1死から放った11号は打った瞬間にマウンドのマイク・クレビンジャー投手が頭を抱えた左中間スタンド中段、飛距離135メートルの特大弾だった。
大谷の打撃、特にフリー打撃を見ていて一番の特徴として感じるのは、バットを非常にゆっくりと振っているように見えて、打球が想像以上に伸びていくことだった。
打球がなかなか落ちてこないのである。
この打球の秘密を解き明かすヒントとなる話をしていたのが、DeNAの筒香嘉智外野手だった。
「とにかくしなるんでタイミングが合うと一番飛ぶのがアオダモだと思います。柔らかい分だけバットとボールのくっついている時間が長い感じ。バットに乗せる感じで打てるので、打球も大きくなる。ただ少しでもタイミングがずれると、しなりが大きい分だけ振り遅れる感じになるので難しい」