オフサイド・トリップBACK NUMBER
本田圭佑の新天地オーストラリア。
現地の巨大な期待、そして裏事情。
posted2018/08/10 11:00
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Getty Images
“I signed!Look forward to seeing you in Australia!!”(契約しました! オーストラリアでお会いしましょう!!)
2018年8月6日、本田圭佑のメルボルン・ビクトリー移籍がついに発表された。これはまさに考え抜かれた選択だったといっていい。本田個人のキャリアメイクにとっても、オーストラリアのサッカー界全体にとってもである。
まず本田にしてみれば、今回の移籍は新天地で自らを再びアピールする格好のチャンスとなる。東京五輪でオーバーエイジ枠の出場を目指すとなれば、トップコンディションを維持していくことは重要だ。
ビジネス面でもシナジー効果を期待できる。本田が運営するソルティーロ ファミリア サッカースクールは、昨年7月にメルボルンに進出している。
受け入れ先のメルボルン・ビクトリーやヒュンダイAリーグ、オーストラリアサッカー界全体にとっても、本田獲得のメリットは大きい。目的はずばり、サッカーそのものの人気回復とTV中継の視聴率向上、競技自体のレベルアップである。
デルピエロや小野伸二を獲得した時期も。
2005年に発足したAリーグは、'10年代序盤までは外国人の大物選手を次々に招聘していた。ロビー・ファウラーやアレッサンドロ・デルピエロ、そして小野伸二を獲得するなど注目を集めるが、人と金の流れはやがて中東、そして中国へと移行。興行的にも下火になっていた。
このような状況を打破すべく、’17-’18シーズンには放映権を所有するFOX SPortsの肝入りで、各クラブに「マーキー・プレイヤー(目玉選手)」の獲得資金が支給されるようになる。
同時にリーグ側は「サラリーキャップ」(所属選手の年俸総額に一定の枠を課す制度)を見直し、大物外国人選手を1名だけ獲得できるような制度改正を行った。一連の発想とプロセスは、かつてMLS(メジャーリーグサッカー)がデビッド・ベッカムを獲得する際に取った措置にきわめて近い。
かくして浮上してきたビッグネームの1人が本田だった。