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本田圭佑の新天地オーストラリア。
現地の巨大な期待、そして裏事情。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byGetty Images

posted2018/08/10 11:00

本田圭佑の新天地オーストラリア。現地の巨大な期待、そして裏事情。<Number Web> photograph by Getty Images

FOXスタジオでのメディア会見では、ビクトリーのマスカット監督、会長、Aリーグチェアマンが並び、本田圭佑への期待の高さが見えた。

才能発掘のためのトレセンを廃止。

 この種の迷走は、若手の強化・育成プログラムで一層顕著になる。

 オーストラリア協会は昨年4月、「オーストラリア国立スポーツ研究所(AIS)」の一部として機能していた、「センター・オブ・エクセレンス(COE)」と呼ばれるトレセンを廃止。人材の育成を、Aリーグのクラブなどに委任する新しい方針を打ち出した。

 たしかにCOEは財政難を抱えていたし、育成プログラムではオランダ系の指導者とベルギー系指導者の派閥争い、代表チームとの連動が必ずしもうまく取れていないといった問題も指摘されていた。

 しかし、これらのトレセンはオーストラリアのサッカー界が発展する過程において、多大な貢献をしている。'05年にAリーグが発足するまで、オーストラリアにはセミプロリーグしか存在しなかった。そんな中、マーク・ビドゥカやルーカス・ニールなどの名選手のキャリアメイクを助けたのがAISやCOEだったからである。

 かつてAISで若手の指導にあたったスティーブ・ダービーは、サッカー専門誌『フォー・フォー・ツー』のオーストラリア版で、トレセンの廃止に警鐘を鳴らしている。

「Aリーグのクラブには、選手育成で非常に大きな負担がかかるようになった。資金繰りがきつくなれば、どの分野がカットされるかは目に見えている。他のアジア諸国がコーチの教育や育成システム、そして国内リーグの強化を進めている以上、オーストラリアが対抗するのはさらに厳しくなっていく」

協会とクラブの関係性も悪化。

 ある事情通は、匿名を条件に踏み込んだ解説をしてくれた。

「オーストラリアでは、ダニエル・アルザニのような優秀な若手も何人か育ってきている。だが全体的に見るなら、育成プログラムが整備されているとは言い難い。COEの廃止は混乱に拍車をかけたし、協会の運営方針に対する不信感を強めてしまった。

 たとえば協会の内部には、現会長に不満を持っている者が少なからずいる。ビジネスマンとしてはやり手でも、サッカー界全体の底上げという点では伸び悩んでいるからだ。

 しかも協会に対して、いくつかのクラブも不満を抱えている。運営方針に満足していないため、代表の試合に若手が帯同することに難色を示すところさえあった。これはオーストラリアがU-17やU-20のW杯本大会に出場できなかったことと無縁じゃない。

 その意味ではクラブ側の責任も相応にあるが、やはりネックになっているのは、協会側が確固たる指針を提示できていないことだと思う。この状態が続けば、アジアのライバルから取り残されるのは目に見えている」

【次ページ】 国内リーグができて選手が小粒化?

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