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本田圭佑の新天地オーストラリア。
現地の巨大な期待、そして裏事情。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2018/08/10 11:00
FOXスタジオでのメディア会見では、ビクトリーのマスカット監督、会長、Aリーグチェアマンが並び、本田圭佑への期待の高さが見えた。
国内リーグができて選手が小粒化?
3つ目の問題は、オーストラリアサッカー界そのものが抱える構造的な矛盾である。ある意味、この問題が最も根が深いかもしれない。
かつてのオーストラリア代表は、マーク・ビドゥカやルーカス・ニール、ハリー・キューウェルなどに象徴されるように、単身ヨーロッパに渡って独自に道を切り開いた選手たちが主軸になっていた。
現在はAリーグが発足したために、キャリアメイクの道筋がきちんとつけられたが、その代わりに欧州のトップクラブでプレーする選手が減り、代表チームの競争力そのものが低下するという皮肉な現象が起きている。
多かれ少なかれ、日本のサッカー界も似たような問題を抱えている。また「欧州組」の日本人選手たちの高齢化が進んでいることは、代表チームにとって懸念材料ともなってきた。だが日本の場合は、欧州でキャリアメイクをする選手たちが今も登場し続けている。オーストラリアのサッカー界よりは、良好な状態にあると見ていいだろう。
選手としての本田の役割はまだある。
目指すべき方向性の喪失、育成システムの迷走、そして国内リーグの発展がもたらした選手の小粒化というジレンマ。オーストラリアサッカー界は今、大きな転機を迎えている。
本田圭佑は、このような状況の中でメルボルンの地を踏む。
日本とオーストラリアのライバル関係を考えれば、本田がAリーグを活性化させる役割を担うというのは、なんとも不思議な巡り合わせだ。
だが今は新天地での活躍を素直に期待したい。本田が選手として果たすべき役割はまだまだ残っている。それにアジア全体のレベルを上げていくことは、本田が若い世代に託した夢――日本代表が世界の強豪入りを果たすという目標を叶えるためにも、必要不可欠な作業なのだから。
(取材協力:グラハム・デイビス)