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「アマボクシングに命懸けとる」
山根明の書かれざる素顔。
text by

前田衷Makoto Maeda
photograph byKyodo News
posted2018/08/10 18:30

わずか5分で辞任会見を終えた山根明前会長。騒動はこれで収まるか。
電話するとゴッドファーザーの曲。
今はあらゆるメディアが山根氏を追い、出自の問題にも触れている。
さすがにこれは過去にも面と向かって山根氏に尋ねるようなことはしなかったが、「大阪・堺の出身」と言っていた。週刊新潮の本人手記では、一度韓国に渡り、10歳の時に密航して日本に戻ったとある。
私の周りにも「帰化する際に力を貸した」という人物もおり、これが事実なら、波乱万丈の半生を送ってきた人で、我々が想像もつかない過酷な苦労をしてきたのだろう。
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若い頃は“一匹狼”として喧嘩を重ねて生きてきたと告白していた。大阪・十三では暴力団からも一目を置かれる存在だったという。本人は「傷害で捕まったことはあるが、前科はない」と言い、その証拠として、前歴の審査が厳しい猟銃所持の許可を30年近くも所持していることを挙げていた。
筆者はいわゆるやくざ映画の類を一切見ないが、世にこの世界にあこがれを持つ人々が少なからずいることは分かる。山根氏に電話すると、初めに「ゴッドファーザー」のテーマ曲が流れてくるように、義理人情の世界や“その筋”の物語が好きなのである。もしアマチュアボクシングと出会うことがなかったら、おそらくそういう社会で才能を発揮していたことだろう。
見栄っ張りで目立ちたがり屋の面も。
人情家の面もあり、人から頼まれるとお節介なほど尽くそうとする。どこか人を惹きつけるものがあり、そこはやはりこの人独自の「カリスマ」なのだろう。見栄っ張りで目立ちたがり屋の面もあり、メディアの取材を率先して受けるのはいいが、昔のやくざの親分との付き合いをばか正直なほどあけすけに語り、今回の会長職辞任の事態に至ったわけだ。
言わなくてもいいことを口にしてしまうほど正直な人だと感じたのは、数年前に判定疑惑を山根氏にぶつけて議論した時だ。「10-10のラウンドは、好きな方に(ポイントを)つけろと指示している。人間誰しも依怙贔屓はあるだろう」と山根氏は主張したのだ。