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大木武と選手たちの幸福な関係。
京都サンガを旅立った男たちの再会。
posted2018/08/02 08:00
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph by
J.LEAGUE
恩返しと呼ぶには、あまりに痛烈な一撃だった。
7月29日のJ2リーグ第26節、FC岐阜vs.大分トリニータ戦。立ち上がりはホーム岐阜のペースで進んでいた試合の様相が、前半19分に一変する。
ピッチの中央から大分MF丸谷拓也が速く強いグラウンダーのボールを蹴ると同時、いや蹴る直前だったか。前線にいた三平和司がスッと動き出す。岐阜のCB田森大己と北谷史孝を置いて、ふたりの間から裏へ抜けると、利き足ではない左足で絶妙のトラップ。右足で撃てる位置にボールをコントロールすると、少しの淀みもない一連の動きでそのままシュート。スペイン人GKビクトルの逆をとり、左下隅に先制ゴールを奪って喜びを爆発させた。
「トラップがすべてでした。右足ならともかく、左足であのトラップができるとは思わなかった。マル(丸谷)のはシュートだったと思うんですけど。あのタイミングで抜け出せれば、GKがシュートをこぼしたときでも、自分が詰めに行けるだろうし。パスだとしてもうまくもらえる可能性があったので。どちらの対応もできるようにイメージしていた」
大木チルドレンの三平と福村。
この場面、対応していた田森からすると「丸谷がシュートを撃つことも分かっていて、三平が出て行くのも分かっていた。オフサイドだと自信を持っていた。自分が油断をしていて、あそこ(自分の足元近く)を通されたのならともかく。シュートも三平の動きも両方見えていたのに……」と、ひじょうにやり切れない様子。
その一方で、決めた三平によれば「自分としては、これ余裕でオフサイドじゃないと感じていた。だからゴールしたあと、副審を見て確認もしなかった。抜け出した時点で『よっしゃあ』って感じだった」と、見解は正反対。それだけ紙一重の攻防だったと言えそうだ。
じつはこのふたり、そしてこの試合で岐阜の左サイドバックを務めていた福村貴幸は、かつて京都サンガで一緒にプレーをした元チームメイト。そして、そのとき京都の指揮を執っていたのが、現在岐阜の監督を務める大木武だ。