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「フランチェスコはビューティフル」
ウッズが讃えた全英王者モリナリ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2018/07/23 16:30
フランチェスコ・モリナリはイタリアに初めてのメジャータイトルをもたらした。ゴルフ界のトップクラスはそれほど一握りの国で占められているのだ。
イタリアに次々と「初」を持ち帰った。
モリナリ兄弟は腕を磨き、腕を試し、戦う場と機会を求め、国境を越え、ときには海を越えて、欧州や米国、世界に飛び出す必要があった。
2004年にプロ転向し、欧州ツアー出場を目指しはじめた。その数カ月後、兄エドアルドが2005年の全米アマチュア選手権を制し、同大会で初のイタリア人チャンピオンに輝いた。
その「初」が母国でビッグニュースになり、子供たちのゴルフへの興味を喚起したと知ったモリナリ兄弟は、以後、ゴルフ界で「初」を追いかけては持ち帰ることを目指した。
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欧州ツアーでは2006年にすぐさま初優勝を挙げたが、以後は勝てない時期が続いた。だが勝てずとも焦ることなく、黙々と努力を積み、ステップ・バイ・ステップでランキングを上げていった。
2009年にようやく世界のトップ50入り。その年の秋にモリナリ兄弟はタッグを組んで挑んだワールドカップで勝利を収め、また1つ、イタリアに「初」を持ち帰った。
「初」が増えれば、母国の子供たちの笑顔が増える。ゴルフクラブを握る子供たちが増える。それが、モリナリ自身の喜びとなり、モチベーションになった。だからこそ、彼はどんなときもネバーギブアップでゴルフを続けてこれたのだ。
ウッズを抑え込む形での全英優勝。
ゴルフの聖地で開かれた'95年の全英オープンから、ウッズは全英オープン挑戦の道を歩み始め、モリナリはプロゴルファーを目指す道を歩み始め、23年後の今年7月。ウッズ財団がサポートする「ウッズの大会」、クイッケンローンズ・ナショナルの最終日に快進撃を披露したモリナリは、腰の手術後の復活優勝に近づいていたウッズを抑え込み、2位に8打差を付けて圧勝した。
ツアー初優勝を「ウッズの大会」で挙げたこと、しかもウッズの優勝を阻止する形になったこと。そんなふうにモリナリとウッズには不思議な縁がある。
クイッケンローンズ・ナショナルの翌週は米ツアーのジョンディア・クラシックに出場し、2位タイになった。
そうやって着実に調子を上げ、自身のゴルフを最高の状態に導いて臨んだ全英オープンで、最終日にウッズと同組になったこと、そのウッズをまたしても抑え込む形で勝利したこと。それは運命の悪戯だったのだろうか。