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39歳武田久はなぜ引退しなかった?
日本通運で臨む都市対抗で優勝を!
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2018/07/14 11:30
都市対抗野球大会に向けても調子は上々という武田久。肩・肘・膝も万全の状態で、球速も140キロを優に超える。
「基本的に自分から教えるってことはしない」
もちろんここまで彼が伸びた一番の要因は彼自身の努力によるものである。武田はその芽を摘まないようアドバイスをする際は細心の注意を払っているという。
「基本的に自分から教えるってことはしないです。その分、相手をしっかり見てあげようと思っています。
この子にはどういうことを言ってあげたら一番いいのか。引き出しを増やしてあげたいと思っています。
たとえば体重のかけ方ひとつをとっても、悪いときにはこうなっているからって人それぞれの特徴があると思うんです。もちろん僕の引き出しにあるものをヒントとして与えることは出来ます。だけど、その選手に合う、合わないがもちろんあるので、その選手の体型や投げ方だったら、こうした方が良いんじゃない? みたいなヒントを与えたいとは思います。
彼らがマウンド上で投げるときに引き出しがいっぱいあれば、あっただけいいわけじゃないですか。それを僕は作ってあげたい。それが理想ですかね」
「絶対に押しつけはしないようにしています」
武田自身も社会人からプロに入団し、最初の3年間は思うような結果が残せなかったという。ただ、そんな遠回りもけっして無駄じゃなかったと彼は話す。
「最終的には自分自身だったりするんですよね。僕もプロで結果を出すまで、凄く遠回りをして、いろんなことをやったり、やらされたりもしたんですけど、自分に合わないなと分かることも全て経験なんです。
そういうことも含めて、最終的には自分自身。
だから今、自分が教える立場になって、絶対に押しつけはしないようにしています。社会人まで野球を続けているということは、彼らにも絶対に良いところがあるから続けられていると思うんです。だから僕は、そのいいところを摘まないで、さらに引き出してあげられる助言をしたい。それだけを考えています」
強い太陽が照り付ける中、未来ある若い選手たちと共に汗を流している姿はとても充実しているように見えた。
そんな彼の表情こそが、15年間過ごしたプロの世界を飛び出し、アマチュアに活路を見出した彼自身の答えなのかもしれない。