球道雑記BACK NUMBER
39歳武田久はなぜ引退しなかった?
日本通運で臨む都市対抗で優勝を!
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2018/07/14 11:30
都市対抗野球大会に向けても調子は上々という武田久。肩・肘・膝も万全の状態で、球速も140キロを優に超える。
アマチュア野球全体のレベルが上がっていた。
その後、プロ野球合同トライアウトをも受けようとした武田だったが、年齢がネックになったのか、なかなか手を挙げる球団は現れなかった。
「だったら、中途半端にプロの世界に残るより、一度離れてみたいなと思ったんです。そこが全てのスタートですよね。それでアマチュア野球に元々興味があったので『自分の力でどこかアマチュアのチームを探そう』と」
そして決まったのが社会人野球の日本通運だった。
肩書は投手兼コーチ。16年ぶりの古巣復帰である。
「とは言っても、今はほぼコーチなんですけどね。試合もちょっとしか投げていないし、(6月の)都市対抗野球予選も投げていない。どちらかといえば若い選手を見ている時間の方が多いです。それだけ純粋にアマチュア野球全体のレベルが、僕がいたころよりも上がっているんだと思います。
それは選手個々のレベルを見ても感じますし、日通(日本通運)も、そうですね。だから今はそれをチーム力として、どう扱えるかを、いつも考えています。日通は、本当に日本一を狙えるチームです。今は自分のことよりも、そのことばかりに頭が行っている感じがします」
監督から言われれば、いつでもマウンドに立つ。
将来性もある有望な若手投手たちの姿を目の当たりにし、自身はサポート役に徹しようと考えを改めた。もちろん選手としての誇りはまだ捨てていないし、監督から「投げろ」と言われれば、いつでもマウンドに立つ準備は出来ている。
選手とも指導者ともいえないどっちつかずの立場ではあるが、そんな状況下でも若い選手たちと一緒に汗を流し、同じ目標に向かっている自分の姿がなんだか心地良かった。
「プロって今は年間143試合ですよね。となると単純に戦力を持つチームが強い。でも、僕は純粋に『試合で勝った者が強い』という野球をやりたかったんです。そこに興味もあった。それもアマチュア野球に戻りたかった理由です。
今は、コーチ兼任なんで勿論、若い選手たちに伝えたいこともあります。だけど、アマチュアの緊張感の中で自分自身もユニフォームを着て、いち選手として野球をやりたかった。
プロとはまたひと味違う緊張感が、この世界にはあるじゃないですか。それを味わいたかったんですよ」