サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本代表が2戦連続で見せた名勝負。
西野采配が当たるのには理由がある。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/06/25 11:45
乾貴士の1点目は、長友佑都のランに柴崎岳のロングパスが合ったところから生まれた。
失いかけた流れを取り戻す2枚替え。
先に2点目を奪うチャンスはあった。60分、右サイドへ流れた柴崎のグラウンダーのクロスに、大迫勇也がフリーで飛び込む。インパクトさえすればというシーンだったが、背番号15は天を仰ぎ、青色の観衆からはため息が漏れる。
4分後にも決定機を逃す。大迫がロングボールに反応して抜け出し、乾へヒールパスを送る。ペナルティエリア左からフリーで放たれたシュートは、バーに嫌われてしまった。
決定機を立て続けに逃せば、ピッチ上の色合いは変わるものだ。71分だった。サディオ・マネを起点に右サイドを崩され、フリーで飛び込んできた相手の右サイドバックにゴールを許してしまう。
西野監督がすぐに動く。香川真司を下げ、本田圭佑を送り出す。3分後には原口元気と岡崎慎司を入れ替え、システムを4-2-3-1から4-4-2へ変更する。
2枚替えにも等しい短時間での選手交代が、すぐに効果を発揮する。78分、大迫がペナルティエリア右外からクロスを入れると、岡崎が相手GKを引きずり込むように潰れる。ボールはファーサイドへ流れ、乾がゴール前へ折り返す。
背番号4が、フリーで待ち構えていた。無人のゴールには相手DFふたりがカバーに入っていたが、本田は確実にネットを揺らした。
西野監督が用意したものが結果に。
交代で投入したふたりと、ピッチの残したふたりが得点に絡んだのだから、西野監督の采配が的中したことになる。そのうえでもう一歩踏み込めば、監督交代の効果によるものでもある。
ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督は、4-3-3のシステムのなかで選手交代をしていた。中盤の選手の立ち位置を変えることはあっても、2トップを採用することはなかった。
W杯本大会になれば、前監督も新たなオプションを用いた可能性はある。ただ、このセネガル戦と同じような成果をあげられたかどうかは分からない。はっきりしているのは、西野監督が「様々な状況に対応しなければいけない」という前提のもとで複数のシステムをチームに落とし込み、それがビハインドを跳ね返すことにつながったことだ。
スカウティングに基づいた対策もあった。セネガルのCKへの対応で、吉田麻也をストーン役に置いたのである。チーム最長身の彼を195cmのカリドゥ・クリバリにも、196cmのサリフ・マネにもぶつけず、特定のマークを持たずにCKを跳ね返す役割にしたのは、この試合だけでなく長身選手の揃うポーランドとの第3戦にも生かされるだろう。