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松坂の横浜か、KKのPLか。高校野球の
最強校をプロ野球選手に聞くと……。
posted2018/06/20 16:30
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Hideki Sugiyama
中日ドラゴンズの広報担当者によれば、松坂大輔の取材には“2カ月待ち”の列ができているそうだ。
それもそのはず、今シーズンは右肩痛から復活し、日本球界で12年ぶりの勝利を挙げたのを皮切りに、6月17日現在まで3勝して、オールスターファン投票・先発投票部門のトップを走っている。ただ、行列の理由はそれだけではない。復活劇に匹敵するくらい殺到しているのが、高校野球関連の取材だというのだ。
100回という節目を迎える夏の甲子園へ向けて、この人ほど外せない役者はいないだろう。
「松坂がすごいのは、球団の枠を超えて誰からも応援されるところなんですよ。甲子園で優勝して、日本代表で世界一になって、メジャーでも活躍した。ずっとみんなの期待を背負ってきたからなんでしょうね。中でも、その始まりがあの甲子園ですから……」
1998年の横浜高校。
これほど多くの人が共有しているストーリーがあるだろうか。
センバツの雪辱に燃えるPL学園との準々決勝、延長17回の死闘はあまりに有名だし、その翌日、投げないはずだった松坂がテーピングをビリビリと破ってマウンドに上がる準備を始めた8回裏から4点、3点と奪って6点差をひっくり返してサヨナラ勝ちした明徳義塾との準決勝、そして、史上2人めとなる決勝でのノーヒットノーランを達成し、春夏連覇を成し遂げた京都成章戦。
あの最後の3日間をハイライトに、あのチームには高校野球のあらゆる魅力がつまっていた。
「歴代最強となると春夏連覇が……」
ちょうどNumberWebで夏の甲子園へ向けて「夏の甲子園~私が選ぶ最強チーム~」のアンケート(http://number.bunshun.jp/list/feature/2018/koshien)をしているところだったので、それについて、しばし、高校野球談義に花を咲かせた。
「歴代最強となると、春夏連覇が1つのハードルになるんでしょうね。でも、正田(樹)の時の桐生第一はランクインしていないんですか?」
1999年に全国制覇した群馬の強豪・桐生第一から東海大を経て、ドラゴンズの黄金時代を支えたリリーフ左腕の広報担当は、半分真顔で母校をアピールしてきた。すると、そこをチームリーダーの大島洋平が通りかかった。