松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、全米までに復調なるか。
「練習の虫」が気づいた原点とは。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/06/06 08:00
メモリアル・トーナメントの松山英樹。最終日は打った途端、「あっ」と口が動く場面が多かった。
到達点でも妥協点でもなく、合致点。
たとえば、ある期日までに工場をフル稼動させて製品を1000個、「作れるか? 間に合うか?」という質問なら、答えはイエスかノーかのどちらかになる。だが、松山が探し求めているものは、そもそもイエス、ノーがわかるものではない。
良かれと思ってやっていたことが、いつしかやり過ぎだと気づいた。
プラスして、さらにプラスして、プラスしすぎたら今度はマイナスをする。スイングやストロークのメカニズムに、そんな足し算と引き算を施し、さらには日々変化する心身の状態やコースコンディションを考慮して掛け算、割り算も必要になる。その中で、そのときどきの最適なポイントを探し出す。
見つけようとしている最適ポイントは、到達点でも妥協点でもなく、自分自身が身を置く「今」に最も適した合致点。しかし、その合致点を見つけることは「言うは易し、実際に発見することは難し」で、おそらくは千載一遇の出会いだ。
地道に辛抱強く、探し求めて。
だからこそ、3日目を終えたときの松山は、その合致点が見えたことを喜び、そして期待した効果も結果も得られなかった最終日は、合致点だと思ったものは何だったのか、「まったくわからない状態になった」と視線を落とした。
全米オープンまでに間に合うか? その問いかけは「あと1週間で千載一遇の出会いができますか?」と尋ねたようなもの。運命の出会いは、あるかもしれないが、予知能力者でない限り、あらかじめ「はい、できます」と答えられるはずはない。
「たぶん無理です」
タイムリミットまでに間に合わせようと駆け足したところで、そう簡単に千載一遇の出会いが得られないことは、苦悩してきた松山自身が痛感しているはず。近道があるのなら、そこを通りたいのは山々だが、地道に辛抱強く手探りで合致点を探し求めていくしかない。