松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、全米までに復調なるか。
「練習の虫」が気づいた原点とは。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/06/06 08:00
メモリアル・トーナメントの松山英樹。最終日は打った途端、「あっ」と口が動く場面が多かった。
調整をやりすぎている傾向がある。
だが、そのわりに松山の表情が明るかったのは、暗いトンネルの中で光を見つけたと感じていたからだろう。
「初日と2日目はうまく調整してやったのが良かったと思うけど、それをやりすぎてる傾向があることに最後のティショットで気づいた。それを、ちょうどいいところで留められれば、チャンスはすごく増えると思う」
いいと思って行なった調整が効果を発揮した36ホール。しかし、いつしかそれが過度になっていることに54ホール目で気がついたこと。それは、春先から苦悩を続けてきた松山にとって、小さいけれど大きな効果をもたらすであろう嬉しい発見であり、光だった。
久しぶりに明るく笑う松山を目の前で眺めることは、取材者としても嬉しいことだった。
小さな光、発見は幻だったのか。
その発見を実践し、初日のような快進撃ができれば、首位との5打差を覆すことだって可能になる。「チャンスはある」。そんな期待を抱きつつ、最終日に臨んだ松山だが、期待はやがて消え去り、明るい笑顔も消えた。
ショットは改善されず、ラフに入り、バンカーやクリークに捕まり、パットも決めどころで沈めることはできなかった。結果が求められる最終日にスコアを大きく伸ばしきれず、優勝争いの蚊帳の外に置かれ、終わってみれば13位タイ。3日目まではショットが不安定でも「オーバーパーを打たなかった」ことを自己評価していたが、最終日のプレーが1アンダーどまりでは「全然納得できないのでは?」
「はい。そうですね」。悔しそうに頷いた。
「昨日、最後にいい兆しが見えたけど、お先真っ暗で終わった」
小さな光、小さな発見は幻だったのか。それとも?
「何が原因か、まったくわからない状態にまたなった」とうつむきながら語る松山。課題が「(決勝の)2日間は、残りました」。
迫り来る全米オープン開幕までに「その課題の克服は間に合わせられそうですか?」
間に合わせてほしいという思いもあって、そう尋ねてしまった。尋ねられたから返答しなければと思った松山は「たぶん無理です」と答えた。だが、よくよく考えれば、その質問は愚問だった。