松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹と王者トーマスの共通点。
評価、賛辞よりも大切なものとは。
posted2017/09/26 17:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
米ツアーのプレーオフ・シリーズ最終戦、ツアー選手権最終日の夕暮れどき。イーストレイクの18番グリーンで行われた表彰式には、2人のウイナーが立っていた。
1人は、今季ルーキーながらツアー選手権を制し、早くも通算2勝目を挙げたザンダー・シャウフェレ。もう1人は、シャウフェレに1打及ばず大会では2位になったものの、フェデックスカップの最終ランクで1位になり、年間王者の座と10ミリオン(1000万ドル=約11億2000万円)を勝ち取ったジャスティン・トーマスだった。
シャウフェレとトーマスはハイスクール時代から腕を競い合い、勝利を競い合ってきた同期だ。先にホールアウトしたトーマスは、シャウフェレが72ホール目でウイニングパットを沈めると、18番グリーン奥で歩み寄り、旧友を祝福した。
「突然、ジャスティンがサプライズで現れ、おめでとうと言って握手をしてくれて、すごくうれしかった」
そう言って喜んでいたシャウフェレは、大会で優勝しても年間王者の座と10ミリオンは手に入れることができなかった。ただ新人にしてプレーオフを勝ち進み、ツアー選手権まで到達して優勝を遂げたことは「自分自身の期待をはるかに上回る出来過ぎの結果」だと、笑顔を輝かせながら謙虚に語った。
年間王者になっても「ルーザーになった」。
対照的に、トーマスは怒っていた。そして、がっかりしていた。シャウフェレを祝福したトーマスの姿はグッドルーザーだったが、年間総合優勝を果たしたのだからトーマスは年間王者、つまりはビッグウイナーなのだ。
しかしトーマスにとって、それは「ウイナーになった。勝った」という感覚からはほど遠く、彼はただただ「ルーザーになった。負けた」と感じ、悔しがっていた。
トーマスは今季、すでに5勝を挙げていた。とりわけ、全米プロを制し、メジャー初優勝を挙げたこと、そしてプレーオフ第2戦のデル・テクノロジーズ選手権を制したことが、ツアー選手権で優勝できずとも彼を年間王者へ押し上げる大きな要因になった。
だがトーマスにしてみれば、それはいわば「どうでもいい話」だった。