野球のぼせもんBACK NUMBER
ギタリスト? 栄養士? 行政書士?
“不思議な投手”武田翔太の本当の姿。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/05/23 08:00
勝利投手となってナインから祝福を受ける武田翔太。安定しない先発陣を強化するためにも、大いなる活躍が期待される。
この急変ぶりは、一体何があったのか?
まるで別人のような快投だった。
5月5日のバファローズ戦は1安打完封。13日のファイターズ戦は2安打しか許さず、またもスコアボードに0の数字を9つ並べた。
ホークスの投手で2戦続けて完封勝利を達成したのは’11年5月の杉内俊哉(14日ライオンズ戦、21日タイガース戦)以来のことだった。
この急変ぶりは、一体何があったのか。
「僕が修正したのは1カ所だけ。投げ方ですね。右腕の使い方を変えました」
武田はこともなげに言ってのけた。
「ふつう投げる時って腕を振りきったら、掌が外側を向くんです。それを内側に向かせるようなイメージ。ボールを離すときに引っ掻くような感じで投げたというといいかもしれません」
うんうんと頷いて話を聞くが、これはかなり難度の高い技術である。
また、興味深かったのが、そこにたどり着いた理由がいいボールを投げる為ではなかったということだ。
「投げミスってどうしてもあるんです。それまでの投げ方だとミスをしたらボールは抜けて、吹き上がって高めに行ってしまう。だけどこの投げ方ならば引っ掻くので、ボールは右打者ならば外角低めの方へ外れてくれるんです」
脱・一発病が復調への近道と……。
4月までの武田は決して連打を食らったわけではなく、手痛いところで一発を浴びたことで白星から遠ざかっていただけだった。
3月31日(バファローズ戦)、同点の6回にロメロに勝ち越し2ラン。
4月7日(イーグルス戦)、3-0とリードした場面で今江年晶に同点3ランを浴びた。
4月20日(ファイターズ戦)、大田泰示に先制ソロを被弾して2失点投球も黒星。
4月29日(バファローズ戦)、安達了一に勝ち越し2ラン。
脱・一発病が復調への近道と考えたわけだが、その腕の使い方は故障のリスクも高くなる。正直、ちょっと心配になるのだが、それでも“常識”の枠にとどまらずに前へ進む姿はいかにも武田らしいと感じてしまった。
そして、もう1つ武器も手にしていた。